「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「落ち着いて」
「なんで! なんで!」


 泣き崩れる私に宥める西山さん、放心状態の陸と龍。


「なんでなんすか? ……こんな突然……」
「詳しくは後でゆっくり話すから。外にマスコミとファンの子が押し寄せてる。お前ら絶対外出るなよ」
「分かりました」
「弁当ここに置いとくからこれ食べて、陸、龍、ましろを一人にしないで」
「あ、はい」




「なんで……なんで……なんで」


 立ち上がって部屋を飛び出そうとした私の腕を龍が取った。


「どこ行くねん」
「空さんのとこ」

「今あの三人はいないよ、外が凄いことになっててしばらく戻れない」


なんで……どうして……


「なんで私達が知るのが……テレビなんですか……世間の人と同じなんですか……仲間だと……思ってたのに……」


 いなくなる悲しみと、裏切られたようなショックと、泣いても泣いても晴れない思いをそれでも涙を流すことで洗い流した。

「あの三人が望んだことだ。お前らがオーラス終わるまで言わないでくれって、演奏や歌に影響あると困るからって……俺ちょっと色々対応があるから、夜また戻ってくるから、これ食ってろよ」
「はい、分かりました」

「なぁましろ、なんか飲むか? 買うてきたる」

 首を横に振ると龍は困ったように笑った。

「相馬さんもいなくなってレドモンもいなくなって私達の周りからみんないなくなっちゃう。陸と龍だっていつか……」
「いなくなんねーよ、大丈夫だから」
「そうや、俺らはおるから大丈夫や」




「なんか食おう」
「……いらない」


 詳細が知りたくてテレビのリモコンを取ったら陸に取り上げられた。


「こんなところに真実なんてねーよ、俺らそれ一番よく知ってるじゃん、西山さん戻ってくるまで待とう」
「そうやな、さぁなんか食べよ、お腹空いたな」


 本当は誰もお腹なんて空いてないだろうけど、空気を変えるように明るいトーンでそう言った。


「あれ? これなんや」


 西山さんが置いていったのは二つの紙袋。

 一つはお弁当やお菓子が沢山入っていて、もう一つの紙袋には……

「あぁ、ファンレターか」


 大量のファンレターが入っていた。

 陸、龍、私とそれぞれ輪ゴムで括られていて、私は気を紛らわすように自分の束のゴムを取った。