「ありがとうございました!!」


 三時間半の公演が終わった。


 東京ドーム公演を無事に終わらすことが出来て私達は心の底からホッとしていた。


「お疲れ様でした!」


 打ち上げ会場。


「じゃあ、まぁツアーはまだここから折り返しだから後半も怪我なく頑張って完走しましょう」

 いつも乾杯の音頭をとるのは相馬さんなのに今日はその相馬さんの姿が見えない。


 忙しい方だし仕事が入ったのかな、なんて呑気に考えていたけど西山さんがその真実を話してくれた。

「えー、で、この大一番、東京ドーム公演を見届けて……えー」


 西山さんの言葉が詰まった。まるで涙を堪えるように……


「えー……」

 なかなか出ない言葉に

「何どうしたの?」

 業を煮やす楓雅さん。

「あたし、言いましょうか?」
「いや、大丈夫」

 西山さんはふぅと息を一つ吐き声を出した。

「相馬は本日……退社した」

「え」

 みんな出た言葉は同じ。


「な、んで……」

「ほら、お前らもう大きくなったし、親の手を離れてもいいかなって」

 わざと明るいトーンになった西山さんの声が部屋中に無駄に虚しく響いた。

 まさか、私のせいかな……そういえば私は迷惑ばかりかけていた。

 あまり感情を顕にさせない相馬さんを怒らせたり悲しませたり、一番してたのは私だ。

 だから相馬さんはもう私達のことを見捨てたのかな……


「私のせいですか?」
「いや違う」


「クビじゃないよね?」

 幸翔さんが続ける。

「違う」



「私達、迷惑ばかりかけてたから……見捨てられちゃったんですか?」
「違う」

 少し強くなった口調は強い否定の表れに思えた。

「ドーム公演、見てくれてもよかったのに……」

 陸がそう言うと西山さんは小さく眉を下げた。

「見てたよ。相馬来てたよ。客席にいたんだよ」

「それやったら声掛けてくれたらよかったのに」

 龍が寂しげな声を出す。

「掛けられなかったんですー。寂しくなるから、しんみりするの苦手な人じゃないですかー」

 真菜さんもうっすら浮かべてる涙。


「でもなんでこんな突然……」
「一言言って欲しかったよね」

 幸翔さんも楓雅さんもまだ納得いってない。


「これ、お前らに」

 そう言われて渡されたのは手紙。

 それを震える手で中を見た。