鳴り止まないコール。



「じゃあ手を出して」


 六人の手に西山さんと真菜さんの手が重なる。




「東京ドーム公演行くぞー」

「おーーーーーーー」



 スタンバイに入る直前



「ましろっ」
「えっ?」


 筆談ばかりで声を発さなかった空さんが突然私を呼んだ。

「どうしました?」








「………大好き」



 そう、一言だけ呟いて立ち位置に向かった。



 照明が落ちれば一気にボルテージが上がる。


 この瞬間が好き。


 みんなが期待に満ち溢れて固唾を飲んで待っている。

 この瞬間、私は愛されている実感が湧く。



忘れはしないよ例えこの喉が潰れて俺の声が出なくなったとしても
君と歌ったこのメロディを俺が忘れるわけないだろ


掬われた足と救われた心
どうしても伝えなきゃいけないことはいつだってそんな大事なこととは限らない


見上げた空に星が瞬けば
いつか君が言った声を思い出す。

俺が歌を歌い続ける限り
何回だって君に伝えるよ
拍子抜けするくらい大したことない話を。



忘れてもいいよなもう俺の声は限界を迎えてる、そんな気がするんだ。
君と歌ったこのメロディをたとえ俺が
忘れたとしても


傷ついた心に気付いた想い
どうしても伝えなきゃいけないことはいつだって腹抱えて笑える話とは限らない




見上げた空に星が瞬けば
いつか君が言った声を思い出す。



俺が歌を歌い続ける限り
何回だって君に伝えるよ
眠たくなるくらいくだらない話を






 静寂に包まれる会場内。

 五万五千人という沢山の人が私達の歌に耳を傾ける。



「こんばんはー! レッドモンスターです」


 空さんの声にボルテージは最高潮。


キャーーーーーーーーーーー



「こんばんは! ブラックモンスターです」


 陸の声に負けじとブラモンのファンも声を振り絞った。


 キャーーーーーーーーーーー



「みんな今日は最高の夜にしよーぜ!」



 レドモン、ブラモン、交互に歌い会場内のボルテージはメーターを振り切った。

 この瞬間のこの気持ち。二度と味わうことはないだろう。


 一生に一度だけ。


 そんなプレゼント。


 陸と龍に出会えて、西山さんに声をかけてもらい相馬さんが空さんと幸翔さんと楓雅さんに会わせてくれて、そしてこの沢山のファンの方に出会えた。


 それは私の一生の宝物。



 いつまで経っても




 忘れはしないよ。




「えー、次の曲はアルバムの中からスポットライトって曲を披露します」


 陸が話しだすと客席のボルテージがまた一段階上がった。


「キャーーーーーーーーーー」
「この歌超好き」
「やばいよね」


「えー、この歌はご存知の通りましろが作詞した歌です。アルバムの曲の中でもかなり人気の歌だってファンレターを読んでると伝わってきます。では聞いてください。……スポットライト」



 静寂の中、鍵盤の切ないソロダンスから始まる――。