「殴られんのかと思った」
「殴らないよー。ふふっ、これ、デモができたから持ってきたの」
「お、マジで? 聞いた?」
「さっき龍と聞いたよ」
「そっか、じゃあ俺も聞いてみるね」

「うん、あと……これ」
「なに……あっ書いたの?」


 渡したのは言われてた作詞をした紙。

「うん、書いてみた。でも文字数とか合ってないかも」
「それはいいよ、こっちで直すから」
「うん、ありがとう」



「なぁ」
「ん?」
「ごめん」
「うん」

 なんのごめんか分かったから素直に受け入れた。

「あんなことしちゃったのも、その後ちょっと気まずくなって避けたことも……ごめん」
「うん……陸、あのね、私が拒まなかったのはね、私が拒んだら嫌いって思っちゃうと困るから。私が陸のこと嫌いって思っちゃったら困るから」
「なんでそう思われたら困るの?」
「……なんでだろう……好きだから」
「お前さー、好き、とかあんまり言うなよ。……そういう好きじゃないなら男にあんまり言うな」

 そういう好きじゃないってなんで分かったの?

 私にも分からなかったこと、なんで陸は分かったんだろう。

 陸はもしかしたら私以上に私の事分かってるのかもしれない。

「分かった」
「大丈夫、ましろが俺の事好きじゃなくても俺がましろ一人にするとかはないから、どんなましろでも俺はずっとそばにいる、ずっと歌うましろの後ろにいるから」


 違う、違うよ。私が陸のこと好きだって繋ぎ止めておきたいのは、私が一人になるのが怖いからじゃない。ドラムがいなくなるからじゃない。

「陸、違うよ、陸は私の事よく分かってるのに、そういうところ全然分かってないよ」
「そういうところって?」
「確かに恋とかの好きじゃないかもしれない。でもそれじゃそばにいて欲しい時にいてくれる都合のいい人みたいじゃない、そんな事ないよ、そんな事……あるわけない」

 そこまで一気に言うとふぅっと、一つ息をついた。

「上手く伝えられないけど、そばにいて欲しいのは、そばにいてくれたら有利だからじゃなくて……あー、もう、なんて言うのかなー」

 上手く伝えられなくてモヤモヤして陸の方を見たら陸はニヤニヤと笑っていた。

「なに笑ってんの」
「ふっ、いやー、説明へったくそだなーって思って」
「んもう、なんなのよー」
「あははっごめんごめん、伝わるよ、分かる。俺の言い方が悪かった、ごめん。そういう好きでも嬉しいよ」
「……よかったー」

 陸の笑顔は幼くなって可愛くなる。

 大きな目が目がなくなるくらい笑ってくれると嬉しくて、私まで笑顔になってしまうんだ。