憧れだったはずなのに、気付けば戻れなくなってた。

振り絞るように想いを吐き出すと、私の肩を空さんの両腕が包んだ。

ぎゅうぎゅうと強く包まれて、もうどうなってもいい、なんて思って私も空さんの背中に腕を回した。

胸がはちきれそうになるくらいに痛くて、苦しくて、それは空さんを抱きしめる力に重なった。

ぎゅうぎゅうと目一杯抱きしめて、ボロボロ流れてくる涙を拭おうと胸から離れようとしたらまた空さんの腕が強くなって


「俺も好きだ」



絶対に好きになってはいけない人を好きになってしまいました。 『ライバルのエースはまずいよ』あの時言われた、一番撮られちゃダメな人だって。

そんなこと、空さんだって分かってる。


「さすがに……まずいよな」

そう言われ不安になりながら顔を上げると

「ふっ、なんて顔してんだよ」

ぐちゃぐちゃになった顔を笑われて

「でも、まー、いっか」
「え?」
「だって俺止められねーもん」
「でも……」
「じゃあ……やめとく?」
「ええ……」


突然突き放されて分かりやすく動揺すると、声を出して笑われて

「うそ、やめない」

そう言って空さんの両手が私の頬を包んだ。

吸い込まれるように視線を交わせば、啄むようなキス。

角度を変えて深くなる。

唇が離れると

「お前……」
「んー?」

「この前、ちゃんと拒んでたんだな」

なんて言われて恥ずかしくなって下を向くと、視線を戻されて

「偉いじゃん」

なんて言うから余計恥ずかしくなる。


また触れる唇、求めるように重なり合えば、なだれ込むようにベッドに倒れ込んだ。



「まだ幸翔いるから」

小声でそう言って壁越しの隣を指した。

「えっ? ええっ?」
「ふっ、だから、あんま声出すと聞こえるから」

そんな忠告をされ必死で堪えると、ガタガタって音がして

「あ、幸翔出てった……もういいよ?」


なんて言われて、そんな事言われても声なんて出せない。


抱き合っても抱き合っても足りないくらいどんなに抱き合ってももっと近くに行きたい。

少しの苦痛、顔を歪めれば


「痛い?」

空さんはすぐに離れた。


「……えっ」
「なに?」
「痛がったら止めてくれるんですね」
「いや普通そうでしょ」
「普通、そうなのか」

優しいな、なんて思って感動していたら


「自分大事にしろよ」


少し怒ったようにそう吐くとその口調とはまるで正反対にゆっくり、ゆっくりと再開した。