「これ、契約書だからよく読んでサインして」
「え、俺らデビュー出来るんすか」
レコード会社の西山雄大(ニシヤマユウダイ)さんから契約書を差し出されると、途端に目を輝かせて中に目を通すこともなくサインを書こうとした陸の手を慌てて掴んだ。
「ちゃんと読まずにサインしないの」
「え? あぁ……」
私に注意されると陸は契約書をペラっと一枚捲り首を傾げた。
「こ、甲? お、乙? おつ? お疲れってこと?」
「だー、俺が後でちゃんと読んで教えるから」
最初の一行目で既に躓いてる陸から龍は契約書を取り上げた。
「デビューの契約書じゃないよ、この事務所に入る契約書。デビューはまだ確約出来ないけど……」
「なるほどな、他の所からデビューするんは阻止したい、と」
「ふっ、まぁそんな感じ」
「じゃあ俺席外すから内容よく読んで問題なかったらサインして。もし契約成立したら俺がマネージャーになるから。俺の威信をかけてお前らをデビューまで持ってくよ。一緒に……歩いていこう」
まだ結成間もない時、路上で弾き語りで歌っていた。その時に声を掛けてくれたのがこの西山さんだ。
当時はバンド形式ではなく弾き語りフォークトリオだったんだけど、陸と龍の才能を引き出してくれたのも西山さんだ。
何度か足を運んでくれて事務所に入らないかって言ってくれた。
私は信用している。屈託のない笑顔の向こうに見え隠れする所謂「信用出来る人間」の目が私には見えるから。
三人で苦戦しながら契約書を読んだ。こんなの読むのは初めてだ。
「ええんちゃう? こんな条件なかなか他じゃ出してもらわれへんよ」
多分新人に対して破格の待遇だろう。契約というものが初めての私達でも分かる。
三人共サインをしたところに西山さんが戻ってきた。
「どう?」
「西山さん……ほら、みんなも立って」
私がそう促すと慌てて二人も席を立った。
「よろしくお願いします」
私が頭を下げると釣られるように二人も頭を下げた。
「よかった、こちらこそよろしくね」
この時はここにいる四人、誰もが想像もつかなかった。後に“モンスター”と呼ばれる事を。
それと同時にこの世界の儚さや脆さを知ることになるなんて思いもしなかった。
芸能界ってのはキラキラ輝いていて夢や希望に満ちている。そんな世界だと信じて止まなかった。
いや、今でも信じてるよ。そしてそういう世界でなきゃいけないとも思う。どれだけ身を削ってでも夢を与え続けていかなきゃいけない。
だって私たちはその代わりに沢山の“ヒカリ”をもらっているのだから。
「え、俺らデビュー出来るんすか」
レコード会社の西山雄大(ニシヤマユウダイ)さんから契約書を差し出されると、途端に目を輝かせて中に目を通すこともなくサインを書こうとした陸の手を慌てて掴んだ。
「ちゃんと読まずにサインしないの」
「え? あぁ……」
私に注意されると陸は契約書をペラっと一枚捲り首を傾げた。
「こ、甲? お、乙? おつ? お疲れってこと?」
「だー、俺が後でちゃんと読んで教えるから」
最初の一行目で既に躓いてる陸から龍は契約書を取り上げた。
「デビューの契約書じゃないよ、この事務所に入る契約書。デビューはまだ確約出来ないけど……」
「なるほどな、他の所からデビューするんは阻止したい、と」
「ふっ、まぁそんな感じ」
「じゃあ俺席外すから内容よく読んで問題なかったらサインして。もし契約成立したら俺がマネージャーになるから。俺の威信をかけてお前らをデビューまで持ってくよ。一緒に……歩いていこう」
まだ結成間もない時、路上で弾き語りで歌っていた。その時に声を掛けてくれたのがこの西山さんだ。
当時はバンド形式ではなく弾き語りフォークトリオだったんだけど、陸と龍の才能を引き出してくれたのも西山さんだ。
何度か足を運んでくれて事務所に入らないかって言ってくれた。
私は信用している。屈託のない笑顔の向こうに見え隠れする所謂「信用出来る人間」の目が私には見えるから。
三人で苦戦しながら契約書を読んだ。こんなの読むのは初めてだ。
「ええんちゃう? こんな条件なかなか他じゃ出してもらわれへんよ」
多分新人に対して破格の待遇だろう。契約というものが初めての私達でも分かる。
三人共サインをしたところに西山さんが戻ってきた。
「どう?」
「西山さん……ほら、みんなも立って」
私がそう促すと慌てて二人も席を立った。
「よろしくお願いします」
私が頭を下げると釣られるように二人も頭を下げた。
「よかった、こちらこそよろしくね」
この時はここにいる四人、誰もが想像もつかなかった。後に“モンスター”と呼ばれる事を。
それと同時にこの世界の儚さや脆さを知ることになるなんて思いもしなかった。
芸能界ってのはキラキラ輝いていて夢や希望に満ちている。そんな世界だと信じて止まなかった。
いや、今でも信じてるよ。そしてそういう世界でなきゃいけないとも思う。どれだけ身を削ってでも夢を与え続けていかなきゃいけない。
だって私たちはその代わりに沢山の“ヒカリ”をもらっているのだから。