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 触れた唇……離れた時、陸は私の腕を取って起こしてくれた。

 沈黙が長くて、言葉が出なくて……なんでこんなことしたんだろう、考えても答えは出なくて……

 困っていた時にその沈黙を割くようにコンコンと扉がノックされた。


「はい」
「なぁ、ましろ知らん?」
「あぁ、ここにいるよ」


 立ち上がってドアまで行くと龍が立っていた。


「なんやここにおったんか」
「うん、お弁当食べてた。龍も食べた?」
「あぁ、めっちゃ美味かったな、ええ値段らしいな……あ、西山さんが呼んでんねん、事務所に来るようにやって」
「分かった」
「陸、俺らは早速VOICEのレコーディング始めるみたい」
「わかった、じゃあタクシー掴まえて行こうか」


 三人でタクシーに乗り込み事務所に向かった。陸と龍はスタジオへ向かい、私は西山さんの元へ向かった。

「ちょっといつもの会議室人が使ってるからこっちの予備室で待っててくれる?」
「あ、はい」


 初めて入る部屋。その部屋は乱雑にダンボールが積み重なっていてもはや物置部屋みたいになっていた。

「お待たせ」


 西山さんと相馬さんが部屋に入ってきた。

「ごめんね、ここすげー狭いよな」
「大丈夫ですよ、このダンボールの数凄いですね」
「それ、全部お前らのCDだよ」
「え? 私達の?」


 なんで?まさか……思ったほど売れなくて自社買いとか?


「お前らがレドモンと差がついてて落ち込んでただろ、ファーストシングル。だから空が買ったんだよ」
「空さんが?」
「あぁ、自腹で。けど置く場所ないからってここに置いてる」
「週刊誌の影響が少なからずあるからって……あいつ気にしてたんだよ」


 そんなこと知らなかった。今まで一度もそんな素振りも出さなかった……

「まぁそんな話はいいんだよ、話逸れたけど、今日呼び出したのは……立石の件だ」
「あ、先程ニュース見ました」
「あ、見た? 相馬しつこいからねー」
「なんだよ、しつこいって」
「もう執念だったな」


 二人共へらっと笑って話してくれてるけど相当怒ってくれてたんだなってのが分かった。

「だからもうその事は終わったんだ、いいな?」
「はい」



「それと……肩の傷のこと、聞いたよ」
「あ……はい」



 この事が原因となってなのか相馬さんは後にプロデューサー業を辞め、完全に芸能界から姿を消した。