「守りたいなら強くなれ」

 相馬さんの言葉。ファンの子との場所がなくなるって言った私に投げられた言葉。

「お前が強くなって偉くなったら誰も何も言えないから、それくらい成り上がれ」

 これはファンの子との場所だけじゃない。陸に辞めようと言われて絶対に失いたくないものに気付いた、その事にも通じる。

 守りたいものが出来た時人って強くなれるんだ。

 そして一週間後、セカンドシングルのウイークリーが発表された。


「ブラモン、百八万枚、レドモン、百二十四万枚」


 前回より両者とも売上が増加して、二作連続ミリオンを記録した。

「また負けたー」

 前回机に突っ伏したのは陸だったけど今回私だったことにそこにいた誰もが驚いていた。

「悔しい。次は追いつこうね」

 自分の感情をハッキリと伝えて目標をしっかりと出した。

「そうだな、次頑張ろう」
「でもいつも上にいてくれるから心強いよな」
「そうだよね、レドモンのみんなは追われてる立場だから私達の方が楽だよね」


「やばーい、俺ら抜かされないように頑張らないと」

 そう言う幸翔さん。その言葉とは裏腹に表情は晴れやかで柔らかい笑顔の裏、私達の闘志に喜んでくれてる、そんな気がした。


 だけど、脱退の噂……まだ聞いてなかった。

「次アルバムなんだけど、その前に……これ見てくれる?」

 相馬さんにそう言われて奥から出してきたのはとんでもない量の紙。


「何これ」
「署名だよ」
「署名?」

 そして西山さんが続けた。

「お前らの共作、VOICEの音源化希望の署名。ドームに来られなくて聞けなかった人、来たけどもう一度聞きたい人、最近好きになってVOICEの存在をネットで知ってどうしても聞きたい人」


「こんなに……」
「そう、で、音源化しようかなって思ってるんだけど……どうだろ?」

 その言葉に前向きな言葉を返したのは意外にも空さんだった。

「いいんじゃない? それに出すなら今だと思うよ、旬なうちに出さねーといつまでもこの人気が続くわけじゃねーし」

 空さんがそんな事を言うなんて正直驚いた。いつも常に上だけ見てる空さん、だけど誰よりも客観的に自分を見てるんだ。

「俺もそうだと思う。今が勝負するには一番だと思う」
「そうっすね」
「いいと思います」
「俺もいいよ」
「僕も」
「私もいいと思います」



「じゃあこのレコーディングに入るか、スケジュールに組むから、また日程出たら言う」


 そして、このシングルが凄かった。
 まさか歴史を変えるなんて……予想だにしなかった。