「レドモン最高。もう一枚買い足そうかな」
「えー、レドモン派? うちは断然ブラモン。ドラムのRikuやばくない?」
「えー、Soraの方がやばいよ! もうかっこよすぎ」



 実は最初にデビューが決まっていたのはレドモンだった。千年に一度、いや、一万年に一度の逸材と持て囃されていた唯一無二の大型新人。

 高校を卒業してライブハウスを転々とした。インディーズで活動する日々。瞬く間に彼らの噂は広まった。

 このSNSの時代。一人が彼らの音楽を、ビジュアルを流したらあっという間に拡散された。とんでもないバンドが現れたと。

 三者三様、全員がかっこよくて演奏も完璧だ。その上ヴォーカルの圧倒的カリスマ性。熱狂的信者がついたが、すぐにデビューという訳にはいかなかった。

 この時代、はっきり言ってCDは売れない。アイドル以外でミリオンセラーを出したのはもう十五年以上前になる。下積み時代を経て今、満を持してデビューとなった時に突如現れた新人バンド。 彼らのデビューに「待った」をかけたのは紛れもなくプロデューサーの相馬尚久だった。