その日、空は澄み切っていた。
 それは思わずシャッターを切りたくなるようなものだった。

 暑くも寒くもない心地よい風が頬を切る。

 昨今続いた暗いニュースがインターネットのトップページに蔓延るのに嫌気がさしたころ、そんな世の中を一蹴するように、阻止するようにとある大型プロジェクトがひっそりと幕を上げた。


 二つのバンドグループを同日デビューさせた。


 変わりゆく時代。価値観の歪みは人々を懐疑的なものとする。
 少しずつ「競争」という意識が薄れている時代。人々は「競争」を好まない。

 皆平和を、皆平等を願う。通信簿も短距離走も順位は出ない。「頑張った」それが結果であり成果である。

 今の時代順位をつけることは「可哀想」勝てない人が可哀想。


 本当にそうなのだろうか。

 勝てなかったのは結果であり、それが負の烙印ではない。負けた悔しさを糧に這い上がる。一位になりたい。そう思う事はそんなに悪いことなのだろうか?


 そんな時代に逆行するかのように立ち上がった一人の異端児。彼の名前は相馬尚久(ソウマナオヒサ)。
 彼は仕掛けたんだ。この時代、敢えて「競争」することで売上を伸ばす戦略を。

 二つのバンド、それぞれのファンはライバルに負けないよう買う、一枚でも多く買う。

 その策略がハマった。

 津久井空、葉山楓雅、桜木幸翔が所属するレッドモンスター、植村ましろ、平山陸、篠田龍が所属するブラックモンスター。

 この二つのグループは全くジャンルが違う。そもそも男性ボーカルのレッドモンスターに対しブルーモンスターは女性ボーカルだ。その上音楽もレッドモンスターは王道ロックバンド、ブルーモンスターは七十年代を彷彿とさせるどこか懐かしいフォークサウンドを取り入れたポップロック。

 この二つのバンドが時代を築く、その名の通り“モンスター”になることは誰にも想像つかなかっただろう。


 唯一人を除いては……


 そう、プロデューサーの相馬尚久を除いては。