イントロが流れだしゆっくりと目を開けると目の前にいるレドモンの三人。

 手を上げてノリノリで盛り上げてくれる幸翔さんに、ニコニコとしながら優しく見守ってくれる楓雅さん。

 そして真剣な顔で音を聞いてる空さん。

 時々メモを取り出して何かを書き込んだ。……空さんの視線の先、それは陸だ。幸翔さんに何かを聞いてそれをまたメモに書いた。

 ……きっとアドバイスだ。

「あっ」

 そんなやり取りを見入っていたらふと空さんと目が合った。

 ただ目が合っただけなのに動揺してまった。

「え? どうしたん」

私の歌が止まったら演奏が止まった。

「ごめん、もう一回、途中から」

 こんなことで止めてどうする、ここはお遊戯会場じゃないんだよ。

 気を引き締めてもう一度歌い出した。

 今から思えばこの空さんへの感情は、恋ってより憧れに近いものだったのかもしれない。

 尊敬と憧れ、まさにファン。

 レドモンのファンだからこそ生で音楽を聞けば痺れるし目が合えば動揺する。

「よし、じゃああとは合同の曲を合わせて今日はとりあえず終わりにしよう」

「陸や龍はいいよね。レドモンに教えてもらえて」
「なに、ましろ歌なんて教えてもらう必要ねーじゃん」
「違います、キーボード教えてもらいたいんです。学校通おうかなー、でもそんな時間ないしなー」
「キーボード? なら上手い人知ってるよ」
「え、誰ですか?」

 そう言われて指された先を見た。

「え………え?」

相馬さん?


「相馬、ちょっと来て」
「んー? なに?」
「ましろがキーボード教えて欲しいんだって」
「なんだよ、俺の才能に気付いちゃった?」
「キーボード弾けるって……嘘ですよね?」
「嘘じゃねーよ、ちょっと待ってな」


 そう言うとキーボードの椅子に座り、その細くて長い指先で繊細に奏でだした。
 開いた口が塞がらないってのを思い切り体で体現してしまった。


「すげー相馬さんキーボード弾けるんですね」
「俺も昔はやってたんだよ、デビューできなかったけどね……だからこそお前らには俺が叶えられなかった夢、叶えて欲しいんだよ」
「えー、そうやったんや……」


「いや、デビューは決まってたんだよ、だけどな、その時……」
「西山、いいよ、その話は」

 相馬さんがそこで制止してこの話は終わってしまった。

 相馬さんの過去に何があったんだろう。