ギャーーーーーーーーーーーーー


 ライブ終わり、外に出ると興奮冷めらやらないお客さんが列をなしている。


「Riku! Riku!」

「ちょっと押さないでよ」

「Ryuくん、これ……」




「おぉ、ありがとう」




「キャーーーーーー」

「え、ずるい」

 外に出るとたくさんの人が待っていてくれて、手紙やプレゼントを渡す手が多くてもみくちゃになる。


「はい、皆さん並んでくださいお願いします」


 西山さんが誘導して、私達三人並ぶとそれぞれ前に列を作った。

「プレゼントを渡すだけです、タレント本人に触れることはおやめください」


「これ」
「あ、ありがとう」
「頑張ってください、応援してます」

 差し入れを受け取り一言ずつ会話をしていると

「あの、Rikuと付き合ってるんですか?」
「え?」
「ちょっと、あんな記事信じてるんですか? あんなのただご飯食べてただけじゃない」
「でも付き合ってるって書いてたじゃん」
「書いてるだけでなんでも信じるんですか? キスしてた訳でも手繋いでた訳でもないのに……」
「美鈴ちゃん、大丈夫だよ、ありがとね」
「これでファン辞めた人もいますから、あなたのせいで」
「あ……はい」
「新規ですか? 昔からこの三人見てたら付き合ってなんかないこと分かりますよね? てか付き合ってても別にいいじゃないですか、この三人の音楽が聞けたらそれだけで……」


 私が一人で路上で歌ってる頃からずっと私の歌を聴いてくれていた子がいる。今でもこうやって毎回来てくれる。
 美鈴ちゃんはいつだって私の味方で、いつだって私を庇ってくれる。
 美鈴ちゃんの瞳にうっすらと涙の膜が張った。

「ちょっとちょっと、なになに、早く、後ろつかえてるから」

 西山さんが制止してくれてその場はひとまず収まった。

「気にすんな」

 そして、小さくそう声を掛けてくれた。

 私を好きでいてくれてる人を私は泣かせてしまっている。
 それはどうにかしたくてもどうにもならなくて、もどかしさで胸が弾けてしまいそう。




「カンパーイ」


「次は一ヶ月後、ついにドーム、頑張ろうな」
「はい」
「ましろ、大丈夫だったか? 貰った手紙は全部一度こっちで開封するから、何か変なものが入ってるかもしれないし」
「ありがとうございます」

「なに? 変なもんて」
「週刊誌の事を責め立ててきた子がいたんだよ」
「え? そんな子おったん?」


「こっちにもいたよ、俺のましろ取らないでって言われたわ」
「俺のましろってなんやねん!」
「まぁ変なファンも増えるけどそれがデビューってことだから、あんま気にしないで」
「いや全然気にしてないですよ、それよりたくさんの人が楽しかったって言ってくれたし、ましろの歌最高だったって俺に言ってきた子も多かったよ」
「本当?」
「あぁ、批判なんてもんは声がでかい奴らだから大きく聞こえるだけで数はすげー少ないよ、ほぼみんな俺らの味方なんだから」
「そう! そうや、陸ええこと言うな」
「うん、ありがとう」



「それより龍、お前今日間違えただろ」
「……え?」
「しらばっくれんなよ」
「気付いた?」
「気付くだろ、誰が作った歌だと思ってんだよ」
「いやー、それよりあっちはどうやったんかなー? 成功したんかな?」
「話変えんなよ、まぁ成功してるだろ、間違いなく」