「くっそ」

 空さんは小さく舌打ちをした。

「空さん、すみません。私のせいでこんなことになってしまって」

 私は立ち上がって頭を下げた。

「お前のせいじゃねーよ」

 空さんそう呟いてドカッと椅子に座った。まもなく幸翔さんと楓雅さんも駆けつけてくれた。

「幸翔さん、楓雅さん、本当に申し訳ありません」

 二人を見るなりまた立ち上がって頭を下げた。

「だーからお前いちいち謝んなよ」

 空さんに怒鳴られて肩がビクッと上がった。


「ちょっとなんで怒鳴るの?」
「大丈夫? 僕達に謝る必要はないよ、悪いことした訳じゃないのにね、それでも謝らなきゃいけないって、大人って悲しいよね」

 穏やかな二人に宥められて余計に申し訳ないことをしてしまったと自分を責めてる所に陸と龍がやってきた。


「陸、龍……」

「おぉ、大丈夫か? なんや、ご飯食べることもあかんねんな、俺も女の子とご飯食べに行くところやったわ、あはははは」

 龍はいつだってこうやって空気を変えようとしてくれる。


 そして、いつだって空回りするんだ。


「陸……」


 表情を変えず、何も発さない陸の名前を恐る恐る呼んだ。

「……で、どういうこと?」
「え」

「だから、電話で言った通りましろと空が撮られちゃって……」

 そこまで西山さんが説明すると陸はケロッとした声で大きく頷いた。

「あー、それは聞きました」
「で、差し替えって形で陸と写真を……」
「あー、はい、いっすよ!」


 陸はいつだってこうだ。分かってるのか分かってないのか、いつまで経っても心が読めない。何も分かってないようで本当は誰よりも分かっていて分からないふりをしているような。

「全然問題ないっすよー」って言って、そして一度もこの件で私に真相を聞いてくることもなければ責めることもなかった。


 翌日忙しい仕事の合間に陸と並んで食事をしてるところの写真を撮られた。

 ちゃんとメイクもバッチリで角度も綺麗でこんなのバレるんじゃない? ってくらいまるで映画のワンシーンのような、そんな写真だった。


 記事には

「なになに、二人は路上時代から付き合っていて今もなお関係が続いているもよう、本誌はそんな二人が仲良く食事をするところの撮影に成功した、やってー、こんなんなんとでも言えるよな、こんなん信じるやつおるんかな」


「MashiroとRikuやっぱ付き合ってたんじゃん、最悪、Mashiroブラモン辞めたらいいのに」
「だーから、お前エゴサ癖やめろよ」
「ん? ……だからこそ公私共に息が合った二人の音楽が聞けるのだろう、って書いてんで、俺どこいったん?」
「お前ももうそれ読まなくていいよ、それよりセカンドシングルのデモ出来たよ」
「おお、聞こうや」