「これ、秋と冬を過ごして終わってますね、同棲は半年くらいかな」
「ちゃんと歌詞の意味も考えてくれるんだ」
「そりゃそうですよ、じゃなきゃいい歌歌えない」
「いや、仮歌なんだからメロディに乗ってたらいいよ」
「いや、そんなの失礼ですよ、空さんの曲に失礼です」
そう強く言ったら一瞬少し驚いたように目を丸くして、その後ふっと両端の口角が上がった。
「ありがとな」
心がじわっと温かくなった。
「いえ、ファンですから」
「え?」
「私、レドモンのファンですから」
そう言ったら、「はぁ?」って言ったあと「ライバルじゃねーのかよ」と少し呆れたようにそう言って笑った。
「ふぅ、どうですか?」
「メロディも一瞬で覚えられるんだな」
「何回か聞いたらだいたい覚えられますけど、空さんのメロディは少し難しいです」
「女ボーカルだとこんな感じになるんだな、悪くねーな」
うんうんと頷きながらさっき録ったデモ音源を聞いた。
「おっけー、お疲れ」
「わー、よかった、お疲れ様です」
「もう帰ろう、てか腹減っただろ、今日のお礼に夕飯奢るよ」
「え、いいんですか?」
最初の頃より沢山話してくれて少しずつ見せてくれる笑顔がとても嬉しかった。
「酒飲みてーなー」
空さんのオススメだというオシャレなレストラン。メニューに目を落としてそんなことをぽつり呟いた。
「やっぱり空さんも飲んでないんですか?」
「そりゃーね、ライブ終わるまではね、それに俺喉そんな強くないし」
「私も飲みたいですー」
嘆くようにそう言った。
「ライブ終わったら打ち上げで飲むか」
「そうですね! でも二ヶ月も先じゃないですかー」
そんな話をして二人で笑った。
「もっと売れてーな」
ことある事に空さんはそう言う。私は今既にもう十分すぎるほど売れてると思うんだけど、まだまだ足りないらしい。
「なんでそんなに売れたいんですか?」
「ん? んー」 少し考えた後に「俺、負けず嫌いだから」そう言ってニコッと笑った。
営業スマイルなんだってすぐ分かったけど、この笑顔雑誌でしか見たことなかったから少し戸惑った。
テレビの取材もあまり笑わずクールな空さんの笑顔はなかなか貴重だ。
「空さんの声って歌ってる時と喋ってる時あんまり変わらないですよね、だからかな、話しかけられてるような感じになるんですよね、それが人の心の警戒心みたいなのをあっさり取り払って胸に簡単に入ってくる気がします」
お酒も入ってないのにこんなに饒舌に話してしまい、はっと我に返った。
「あ、すみません偉そうに」
「いや、いつも褒めてくれるよね、ブラモンのみんなは」そう言って「嬉しいよ」小さくそう付け足した。
そして空さんにご馳走になりそのままタクシーにのって別々に帰った。
次の日この軽率な行動がとんでもないことになるなんてこの時は気付かなかった。
「ちゃんと歌詞の意味も考えてくれるんだ」
「そりゃそうですよ、じゃなきゃいい歌歌えない」
「いや、仮歌なんだからメロディに乗ってたらいいよ」
「いや、そんなの失礼ですよ、空さんの曲に失礼です」
そう強く言ったら一瞬少し驚いたように目を丸くして、その後ふっと両端の口角が上がった。
「ありがとな」
心がじわっと温かくなった。
「いえ、ファンですから」
「え?」
「私、レドモンのファンですから」
そう言ったら、「はぁ?」って言ったあと「ライバルじゃねーのかよ」と少し呆れたようにそう言って笑った。
「ふぅ、どうですか?」
「メロディも一瞬で覚えられるんだな」
「何回か聞いたらだいたい覚えられますけど、空さんのメロディは少し難しいです」
「女ボーカルだとこんな感じになるんだな、悪くねーな」
うんうんと頷きながらさっき録ったデモ音源を聞いた。
「おっけー、お疲れ」
「わー、よかった、お疲れ様です」
「もう帰ろう、てか腹減っただろ、今日のお礼に夕飯奢るよ」
「え、いいんですか?」
最初の頃より沢山話してくれて少しずつ見せてくれる笑顔がとても嬉しかった。
「酒飲みてーなー」
空さんのオススメだというオシャレなレストラン。メニューに目を落としてそんなことをぽつり呟いた。
「やっぱり空さんも飲んでないんですか?」
「そりゃーね、ライブ終わるまではね、それに俺喉そんな強くないし」
「私も飲みたいですー」
嘆くようにそう言った。
「ライブ終わったら打ち上げで飲むか」
「そうですね! でも二ヶ月も先じゃないですかー」
そんな話をして二人で笑った。
「もっと売れてーな」
ことある事に空さんはそう言う。私は今既にもう十分すぎるほど売れてると思うんだけど、まだまだ足りないらしい。
「なんでそんなに売れたいんですか?」
「ん? んー」 少し考えた後に「俺、負けず嫌いだから」そう言ってニコッと笑った。
営業スマイルなんだってすぐ分かったけど、この笑顔雑誌でしか見たことなかったから少し戸惑った。
テレビの取材もあまり笑わずクールな空さんの笑顔はなかなか貴重だ。
「空さんの声って歌ってる時と喋ってる時あんまり変わらないですよね、だからかな、話しかけられてるような感じになるんですよね、それが人の心の警戒心みたいなのをあっさり取り払って胸に簡単に入ってくる気がします」
お酒も入ってないのにこんなに饒舌に話してしまい、はっと我に返った。
「あ、すみません偉そうに」
「いや、いつも褒めてくれるよね、ブラモンのみんなは」そう言って「嬉しいよ」小さくそう付け足した。
そして空さんにご馳走になりそのままタクシーにのって別々に帰った。
次の日この軽率な行動がとんでもないことになるなんてこの時は気付かなかった。