華々しくデビューを飾った私達は瞬く間に時の人となった。

 まるでシンデレラの階段を二段飛ばしで駆け上がってるような、だけど、それはあまり現実味がなくて、私達はただ毎日、目の前の目標を達成することだけに集中した。


 デビューから一ヶ月後、ライブハウスでライブが決まっていた。
 
 キャパ数五百人。

 はっきり言って少ない。少なすぎる。天狗になってるわけじゃないけど、ミリオン売ったアーティストの箱のキャパじゃない。

 だけどこれも相馬さんの戦略通り。

 この日、同日、同時刻、別の場所の同じキャパのライブハウスでレドモンもライブをする。

 そして、更に一ヶ月後私達は東京ドームで合同ライブが決まっている。

 五百人の箱のライブハウスは所謂前座で本当のデビューライブはドームでやる。

 でもみんな五百人の箱に来たいに決まってる。それに漏れた人の救済措置、にしてはドームは箱が大きすぎるか。

 普通ならデビューからたった二ヶ月でドーム公演だなんて埋まる気がしないけど、今回は絶対に埋まる自信があった。

 だって私達だけじゃないから。レドモンのみんながいるから。

 いつしか私達はレドモンのみんなを信用し、頼り、何よりも尊敬しだした。

 いい関係が、築けてきていた。

「東京ドーム公演は警備を強化するから、多分ファン同士の小競り合いが発生してもおかしくないからな」

 西山さんにのその言葉に

「そうならないようにお前らからそれぞれのファンにちゃんと釘を刺しといてくれよ」

 相馬さんがそう付け足した。

「警察のお世話になったらあたしたち終わりになっちゃいますー」
「いやー、でもまそれはそれで……マスコミもこぞって報道するし無料のプロモーションになるけどな」

 徹底的に非情にも勝ち上がる作戦の相馬さん。

「とことん炎上商法に乗るね」
「でも怪我人出たらさすがにアウトだから、本当に頼むよ」



「じゃあライブの打ち合わせとあともうセカンドシングルを作り始めて。CMも来てるから」


 毎日眠る暇なんてなくて体は疲れていたけど、それでも頑張れるのは歌が好きだから。

 私達の歌が人の心に響いてほしい、そう思え ば思うほど私達は頑張れた。

 なりふり構わず頑張れたんだよ。


 事務所に併設されたレコーディングスタジオ、防音設備も音響設備もさすがに一流で、そこを無料で使いたい時に使いたいだけ使わせてもらってた。


 そこで三人で音を合わせたり一人でこもってキーボードの練習をしたりしていた。

 ブラモン用とレドモン用、二つのスタジオがあって、レドモンの人達にすれ違うことは滅多にない。