「もうこれ以上は寿命を売らないように。以上」

「はい……」


憂鬱感が身体を蝕んでいく。

家……帰って夕食作らないと。


長男の岳とバイトをして、やっと賄える生活費。


もし、私がいなくなったりしたら……岳が倒れちゃう。

寿命を売ったことは後悔していない。

必要なことだったとは思っているから。


頬を伝う水。

私、泣いてなんかないよ?


ポツリと地面にはじけた水滴。


……雨だ……!洗濯物は……部屋干しに変えたんだ。


よくよく考えてみればご飯も作れる気力ないよなー……このまましばらく濡れちゃうか。


帰り道、公園を通り抜ける途中で止まり、広場で手を広げる。


くるくると回った。

セミロングの真っ黒な髪の毛が、風に吹かれて揺れた。


「あー……もう全部終わっちゃえ!!」


人、誰もいなくてよかったなぁなんてこんな時ですら思う。

だけど……見落としていた。


目の前には、クラスメイトの水無瀬くんがいた。


「みっみみっ!?水無瀬くん!?」


水無瀬くんといえば私の苦手な男ランキング1位に君臨するものだ。

よく嫌いだのうざいだの言ってくる。

私の方が嫌いだけど。


「何してんだよんなとこで」

「み、水無瀬くんこそ……!」

「相沢って変な趣味あったんだな」

「そっ!?そんなことは」

「こんな場所でぐるぐる回って独り言大声で言ってるとか……びっくりするだろ」


ん……?びっくり?

またうざいだの言ってくるかと思ったらびっくりという割と可愛らしい単語が出てきて少し目を丸くした。