街灯に照らされた夜道に二人分の影が伸びる。
とぼとぼと狭い歩幅で進む私に沢里は自転車を押しながら合わせてくれた。
帰りたくない、その気持ちは口に出さずとも伝わっているようで。
「家まで送っていくから、殴ったことはちゃんと謝ろうぜ!」
謝って元に戻れるなんて青春ドラマのようにはいかない気がするが、沢里の放つ陽のパワーに引きずられ家路につく。
よくも悪くも竹を割ったような性格の沢里には逃げるという選択肢は思いつきもしないのだろう。
鉛のように重い足を動かしていると、ふと見知った背中が前を歩いていることに気付く。
「あ、おとうさん……?」
「ん? 凛夏ちゃんじゃないか。今帰り?」
背広姿の義父が振り返り、不思議そうにこちらを見つめ首を傾げる。
仕事帰りはひと駅前から歩いていると聞いていたが、まさかここで遭遇するとは思っていなかった。
体を固くさせる私とは反対に沢里は人懐っこい笑顔で義父にあいさつをする。
「凛夏ちゃんの友達かな?」
「はいっ同じクラスの沢里です」
「そうかそうか。凛夏ちゃんをいつもありがとうねえ」
「こちらこそ! 今から家まで送って行こうとしてたところっす!」
いつもにこにこしている義父とコミュニケーション力に長けた沢里はポンポンと会話を弾ませていた。
私はなんとなくその場に居づらくなって自分の靴先に視線を落とす。