「昨日の【linK】の配信見た?」
「見た見た。天才。てか【linK】高校生ってマジなん?」
聞こえてくる会話にぴくりと耳を立てる。
登校中も音を組み立てていることが多いけれど、配信の次の日はどうしても耳に入ってくるその単語が気になってしまう。
桜並木を風が抜ける。
白い花弁とともに、頭の後ろでポニーテールが揺れる感覚。
乱れた前髪を直してから、噂話とともに校門をくぐる。
【linK】の作り出す音楽は、私の通う高校でも評判だった。
女子中高校生を中心に、曲がキャッチーで歌詞が共感を呼ぶとのことだ。
それもそのはず、本物の女子高校生が一から作っているのだから。
配信を始めたばかりの頃は、こんなに名が広まるとは思ってもいなかった。
一人で歌いたい。ただそれだけの気持ちで縋るように始めた。
凛夏のことを知らない誰かに、【linK】の歌を聴いてほしかった。
今はこうしてたくさんの人に聴いてもらえている。その事実が陰鬱とした心を燦々と照らしてくれる。