どうやら柾輝くんといたことは両親に黙っていてくれてはいるようで、母は私の泣きはらした目を不思議そう眺めてきた。
「どうしたの?」
「昨日泣けるドラマいっき見しちゃって」
適当な言い訳をして家を出た。
柾輝くんのことを兄だと言えなかったことを酷く後悔している。あの時母に責められることを考えて言葉が出なかったのだ。
結局私は自分を守った。柾輝くんを悪者にして。
柾輝くんからメッセージの返信が来ないのも自業自得だった。
授業中もずっとそのことばかりが頭の中を支配し、なにも手につかない。
沢里にじゃれつかれては適当な相槌を打ち、土井ちゃんに顔色が悪いと指摘されてはその度に黙って頷いた。