どう言えば正解なのか。なんと言えばこの場を治められる? 

 ぐるぐると思考する頭にぽんと柾輝くんの手が乗った。

「んじゃ、連れまわして悪かったな」

「あ……」

 透流さんを一瞥して柾輝くんは背を向ける。伸ばした手はするりとかわされ、その背中はあっという間に見えなくなってしまった。

 本当のことを言えなかった。突然のことだったとはいえ、柾輝くんをまるで悪者のようにしてしまった。後悔がどっと襲いかかってくる。

「凛夏ちゃん、どういうことかは家で聞こう。――凛夏ちゃん?」

 透流さんの冷たく厳しい声よりも胸を刺すのは、柾輝くんに突き放され、突き放してしまったという事実。

 引っ込んだと思っていた涙が一粒、ぼろりと零れた。