続いて、暑さを微塵も感じさせない妖精のような軽やかさで、沢里のお母さんが私たちの前に表れた。

 女優帽から覗く目が目が少し赤くなっている。

「二人とも、すっごくよかったわ~!」

「ありがとうございます!」

 手と手を取り合って喜び合う私たちを尻目に、沢里は石像のように動かなくなってしまった。

 どうしたというのだろうか。

 せっかくお母さんが労いに来てくれたのに。

 その理由は沢里の視線の先にいる一人の女性にあるようだった。

「Hey!!」

「げっ」

 健康的に焼けた小麦色の肌、スポーティなタンクトップとホットパンツからはすらりとした長い手足が伸びる。

 英語まじりの女性はレイバンをずらして沢里の顔面スレスレまでにじり寄って言った。