体が熱い。終わってしまった。息苦しい。最後まで歌えた。

 沢里と一緒に。

 ぐるぐると巡る思考とともに目頭が熱くなってくる。

 沢里は腰に手を当て上を向きながらまだ泣いている。

 さすがに泣きすぎではないかと思い顔を覗き込むと、そのままその大きな体に抱き込まれてしまった。

 沢里の体も熱い。

 全力疾走した後のように心臓が跳ねているのが分かる。

「ありがとうリンカ、俺と歌ってくれて。リンカがいるから俺は本当の自分でいられる。ただの沢里初春として歌えるんだ」

 熱い体と穏やかな声に包まれて、とうとう私の両目からも涙が流れた。

「こちらこそありがとう。私に、人と歌う幸せを思い出させてくれて」

 沢里の大きな体をぎゅっと抱きしめ返す。

 暑くて仕方がないけれど、どうしようもない多幸感にただ身を任せる。

 二人で馬鹿みたいに泣いて、しばらくして恥ずかしくなって、肩を並べて舞台裏から逃げるように立ち去った。

 私たちは歌い切った。全力で。

 後悔はない。