サワソニのことを説明すると「毎年やってるフェスじゃん! すごいね!」と無邪気な笑顔で返される。

 私はまた泣きそうになって、ココアで温まった顔をカーディガンの袖で隠して誤魔化した。

 土井ちゃんには二枚のチケットを渡す。

 元々土井ちゃんの分として確保していたものと、柾輝くんの分だ。

「一人じゃ寂しいかもしれないから、誰か音楽好きな人がいたら一緒に来て」

「分かった!」

 土井ちゃんの笑顔に心がすっと軽くなったのを感じた。

 私はなにをためらっていたのだろう。

 土井ちゃんは中学時代の仲間とは違い、ちゃんと私の声を聞いてくれる人だと分かっていたのに。

「めっちゃ楽しみ! 応援してるからね」

「ありがとう。土井ちゃん、大好きだよ」

「へへっ。なにさ急に。私も凛夏が大好きだよ」

 顔を見合わせて笑い合う。ふと窓の外を見ると、雨はもう上がっていた。