ライブ。その単語にそわっとしてしまう。
なにを隠そう柾輝くんに電話したのはそのことを話すためだった。
「柾輝くん、あのね。いきなりなんだけど、私ライブに出ることになったの」
「は?」
「【linK】としてステージに立つことにした」
柾輝くんはそれを聞いてしばらく黙った後、小さく「そうか」とだけ呟く。
「だから観に来てくれないかな? 来月の第一土曜日!」
「あー」
柾輝くんは再度咳き込み、小さな声で言った。
「悪い、その日は俺もライブだわ」
「あ……。そう、なんだ。そっか、忙しいんだもんね」
人生初の晴れ舞台を柾輝くんに観てもらえないなんて。
仕方がないとはいえショックを隠せず私は放心する。
珍しく重ねて謝ってくる柾輝くんに、私は慌ててわざと明るい声で話題を変えた。
「し、新曲聴いてくれた?」
「ああ、あれな。よかったと思う。新しいコーラスもいいんじゃないか」
「本当? よかったあ」
柾輝くんのお墨付きをもらえれば沢里も安心するだろう。
「しかしよく顔出しする気になったな」
そのひとり言のような呟きがじんと胸に染みる。
柾輝くんは今まで【linK】を支え続けてくれた分、顔出しを拒否する私のこともよく知っている。
突然顔出しする気になったと言ったら疑問に思って当然だ。