「返信くらいしてよ」

 怒っているつもりが存外気弱な声になってしまった。

 私はスマホから口を少し離して小さくため息をつく。

 ゴホゴホと咳き込む音の後に、しゃがれた声が続いた。

「だから悪かったって言ってるだろ」

「体調崩してたならそう言ってくれればよかったのに! 余計な心配したんだからね!」

 ようやく柾輝くんと連絡がついたと思ったら、盛大に風邪を引いていたらしい。

 しかも一度治って無茶をしたらすぐにぶり返したとか。

 鼻声の「あーうるせー」が聞こえてきて、私は気を揉みながらも柾輝くんの声が聞けたことに安堵していた。

「ファミレスではごめんね。透流さ……新しいお兄さんにはちゃんと柾輝くんのこと説明したから」

「別に気にしてねー」

「ちゃんと謝らせて。私、あの時お母さんのことが頭によぎっちゃって、柾輝くんが兄だって言えなかったから……」

「分かってる。連絡しなかったのはマジでこっちも忙しかったんだよ。ライブもあるわイベントもあるわ」

「そうだったんだ」