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 土曜日、沢里に連絡をして街の図書館にいることを確認した。

 私は意を決して重厚な扉の前に立ち、沢里と書かれた表札の下にあるインターホンを押した。

 沢里に謝らなければならない。

 チケットが足りないなんて嘘だ。

 家族と土井ちゃんに渡しても五枚余る。

 しかし私はその余りを別の使い道に回したかった。

 そのためには沢里が家にいない隙にやらなければならないことがある。

「あの、突然すみません。五十嵐凛夏です。少しご相談したいことが……」

「あら凛夏ちゃん? どうぞ入って」

 沢里のお母さんに招き入れられる。

 まず最初に言うべきは、これから話すことは沢里には内緒にしてほしいということだ。

 勝手な行動を許してほしい。