そんな在り方でもいいんだと思った途端、体の力が抜ける。
音が私の周りを取り囲んで、音と音が繋がる。
一小節、二小節とどんどん鳴り響き、鼓動がリズムを刻んでいく。
私は歌が好きだ。
誰かと合わせて歌う歌も、誰かのために歌う歌も。
それを思い出させてくれたのは他の誰でもない沢里だった。
気付くと沢里の両手が私の頬を挟んでいる。
見えるようになったその表情は酷く真剣だ。
「いいのか、リンカ」
「うん、今度は私から言わせて。沢里……私と一緒に歌ってください!」
沢里の目を見つめて言うと、次第に沢里の目が潤んでいく。
また泣かせてしまったかと一瞬焦るが、沢里はそのままがばりと私の肩に顔を伏せた。
「うん」
それは今まで聞いた沢里の声の中で一番小さくて、そして一番嬉しそうな声だった。