沢里は「そんなに俺んち来たいかー」なんて勘違いをしながらさかさか歩く私を先導し始めた。
「ところでリンカ、俺の親父のこと知ってるっけ?」
「知らない」
有名なアーティストとは聞いているが、どこの誰かは知らなかった。
沢里の音楽を聴く限り、かなりしっかりとした音楽教育を施せる人物であることは想像がつくが。
「交響楽団の人とか?」
「全然違うなー」
「んーじゃあピアニスト?」
「それも違う」
「んんー?」
一向に正解できずに沢里の家にたどり着いてしまった。
重厚な門の奥には広い庭とおしゃれな白いタイルの小道。
まさかと目線を上げると、普通の家三軒分くらいの大きさの家がそこに鎮座していた。