*
私たちはやがて、目的の友達の家である一軒家にたどり着く。
入り口にはたくさんの花が咲いていて、鉢植えには可愛いらしい猫の飾りが置かれている。
久しぶりに会う緊張のせいか、私は震える手でインターフォンを押す。
『はい』
応答したのは占い師のお母さんみたいだ。
私が用件を伝えると、淡い髪の女の子がひょっこりと出てくる。
「しずちゃん、久しぶり。『あの日』以来だね」
「うん。ねねちゃん、久しぶり」
私の中学の時の友達、鳴海寧々ちゃん。
陽光に包まれたような淡い髪で、笑顔がよく似合う女の子だ。
身長は私よりも低く、小柄な体つきで、胸につけている淡いブローチが何よりも大切な宝物で、そして占い師のお母さんがいる。
中学時代の彼女は本当にお節介焼きで、行動力のある性格だったと思う。
「ねねちゃん、突然のことだったのに、お願い聞いてくれてありがとう」
「えへへ、しずちゃんの頼みだもん。それに久しぶりに連絡をくれて嬉しかったから。お母さんにはもう伝えているよ」
ねねちゃんはふわりと花が咲いたかのように笑う。
「それで占ってもらいたいことって?」
「その……春陽くんの病気についてのことなの……」
「え……」
思い切ってそう伝えたら、それまで楽しそうに話していたねねちゃんの顔から一瞬で笑みが消えた。
違和感を覚えながらも、私は隣に立つ春陽くんを見て説明する。
「春陽くんが『共依存病』という難病で困っているの。だから、ねねちゃんのお母さんの占いで……」
「はるくん……」
息を呑む気配が伝わるほどの沈黙の後、ねねちゃんがそうつぶやくのが聞こえた。
私はそこでようやく、ねねちゃんが春陽くんを見て強張っていることに気づく。
「どうしたの?」
「な、なんでいるの……? なんでなんで……」
尋ねる私の声も聞こえないみたいに、ねねちゃんは真顔で同じ言葉を繰り返す。
「なんでって、占ってもらいに……」
「はるくんは……」
絞り出すように言葉を紡ぐと、ねねちゃんは躊躇うような間を空けてそれを口にする。
「はるくんは一年前に死んだのに」
「え……」
私はその瞬間、世界がひっくり返ったような驚きと、底知れない恐怖に打ち震えていた。