「雫、相談に乗ってくれてありがとうな」

思い悩んでいると、春陽くんは幸せ零すように満面の笑みになった。
また、その笑顔が記憶の中の誰かの面影と重なった、その瞬間……。

『しずちゃん、同じ質問を何度も占ってもらったらダメだからな』

記憶の奥から、不意にある言葉が脳裏に浮かびあがった。
この言葉は確か……中学の頃に占いの結果に納得できなかった私に対して、誰かが言った言葉だったような? 
ただ、誰が言ったのかまでは思い出せない。
でも、ひとつだけ確信があった。私にとって大切な人が言った言葉なんだ、と。

あっ……。

その時、不意の閃きが私の脳髄を突き抜ける。

「春陽くんの時間を取り戻す手がかり……。それを発見するための方法って、占いとかじゃダメかな」
「占い?」

私は人差し指を春陽くんの目の前でかざした。

「中学の時の……友達のお母さんがね、占い師なんだけど、恐ろしいほど当たるって評判なの」

必要なこと、というのは時と場所によって様々だ。
呆気に取られた春陽くんはあまりにも純粋な表情で、私は不思議な感覚に包まれる。

「水晶占いで身体の状態を予測したりすることができるんだよ。春陽くんの時間を取り戻す方法のヒントも分かるかもしれない」
「健康運占いみたいな感覚でいいんだっけ」
「うん。健康運占いと大差ないかな」

私はそっと、視線を合わせるように語り掛ける。

「春陽くん、ありがとう」
「なんだよ、急に」
「私のアドバイスを信じてくれてる。それがすごく嬉しい」

私が改めてお礼を言うと、春陽くんは顔を赤らめて「大したことねえよ」とつぶやいた。
それは私の頭を撫でるように優しい声音だった。

原因不明の『共依存病』の進行が治まれば、また、いつもどおりの日常が戻ってくるはずだ。
私はそう信じたかった。