冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


「お前はただ、自分のことだけ考えろ。自分の考えが決まったら、私の元へおいで」


「……はい」



私は、頷くことしか出来なかった。


旦那様は自分の能力のことを話してくださったのに。私は、自分のことを話せなかった。


私は一体どうしたら良いのだろうか……。



***


月日は流れ、披露宴前日の夜。


あの日からあっという間に時は過ぎ、季節は秋へとうつり変わっていた。


私ど旦那様の関係は相変わらずで、一方的に愛されてばかりな気がする。


お父様からも手紙で何度も戻ってこいと言われてきた。だけど私は旦那様と一緒にいたくて。


ここに残る選択をした。


明日の披露宴ではお父様もいらっしゃる。


明日のことは明日考えればいい。私が今すべきことは……。



「雅です。旦那様、お時間よろしいでしょうか?」


「いいぞ。入れ」



旦那様の部屋の前で大きく深呼吸をする。


私は……今から旦那様へ、自分の思いを伝えようとしていた。