何か感情の変化があったのだろうか、それともただの気まぐれか。
「興味ないっていう理由じゃ、足りない?」
「本当にふみくん容赦ないね」
「恋愛とかそういうのどうでもいいし。必要ない」
そう言ったふみくんの瞳が夕日の光を集めて、キラリと輝いた。
透き通ったその瞳には誰も映らない、映さない。
「ふみくんは、ふみくんだね」
「俺はただ美月の傍にいる、それだけだよ」
「ーー知ってるよ」
ふみくんが瞳に誰も映さないのは、私だけが知る唯一の秘密。
いや、ふみくんの秘密なのか私の秘密なのか。
私だって同じ理由を抱えているから、ふみくんの答えの理由が分かる。
『無表情』の理由は、きっと教えてくれないのだろうけど。
「ねえ、ふみくん」
この質問の答えは返ってくるのか分からないけれど、思うがままにそっと口にした。
「あとどれくらい、かな」
「それは言えない」
言えない、その理由はきっと答えてくれないそんな気がしていて、遠くからやって来たバスをじっと見つめていた。
ふみくんなりの優しさなのだろうけど、今はその優しさが少しだけ痛い。
やって来たバスに乗り込み、空いていた二人席に並んで座ると一気に距離が縮まる。
揺れるバスの心地良さにそっと目を閉じ、そのまま身を委ねる。
揺れる度にほんの少し、ふみくんと肩と肩がぶつかり合う。
ぬくもりなんて感じるわけないというのに、何故か温かい。
ゆっくり手に手を取って、本物のぬくもりを感じた……
ーーそんな叶わぬ、小さな夢を見た。