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「美月ー!」
帰る支度をし終わったその時、私ーー栖原 美月(スハラ ミヅキ)の名前を呼ぶ友の声が聞こえた。
机の中から取り出した教科書を鞄の中に仕舞いながら、私は声をかけた友の姿を探した。
後ろから近づいてくる足音に振り返る間もなく、腕を捕まれそのまま足を動かすしか他ない。
「ちょ!まっちー!」
まっちーこと友達である梛浦 小町(ナギウラ コマチ)は、ぐいぐい私の腕を掴んで前へ前へと進んでいく。
表情を読み取って何が起こるかを予測しようと試みたが、勢いに負けて引っ張られるままで顔を見ることすらできない。
「またもや大スクープよ!!」
「スクープ?」
表情から読み取ることのできないものを声で何となく察しようと思ったが、まっちーが興奮した声を上げている理由は想像がつかない。
こんな校内で大事になるようなことなんて起きる方が、よっぽど珍しいくらいなのだから。
ただ人とは少しだけズレていると言われる私には、もしかしたらスクープと思えないようなことが皆にとってはスクープになるのかもしれない。
下校時間と重なっていることもあり、家路と急ぐ生徒達の波をかき分けるように進んでいくと、着いた先は資料室だった。
「まっちー?ここで何かやってるの?」
「いいから!こっちこっち!」
自分の目でしかと確かめろ!とでも言うように、まっちーは資料室の中へと私を引きずり込んだ。