死神という立場で傍にいるというよりも、彼女は一人の人間として傍にいてほしいように感じて俺は人間界での生活を始めた。
何もかもが新しいもので最初は戸惑いもあったはずなのに、彼女が傍にいてくれたお陰で俺の世界は広がった。
でも俺はこの仕事が終わり次第、元の世界に帰る身。
だから彼女との約束を守れる範囲での行動しかしなかった。
だと言うのに、この世界の人間関係は複雑だった。
見ず知らずの人からの好意があちこちからやってきて、対応に困る日々。
それだというのにこんな俺を見て、意地悪そうに彼女はいつも笑っていた。
「ふみくん、顔“は”いいからね」
この顔に生まれたくて生まれたんじゃない、そう言い返したかったのに何故か言葉は上手く出てこなかった。
「美月……」
名前を呼べば振り返って笑顔を見せてくれる彼女は、もうどこにもいない。
これが本来の俺の仕事だから、当たり前なのに。
どうしてこんなに、こんなにもーー
涙が溢れて止まらないんだ。