調査室のテーブルに資料が散乱し、モニターにはEからの通信断片が再び映し出されていた。
アルテミス、リベルタ、セレネ、ティリットの四人は息を詰めてスクリーンを見つめている。

「F……いったい誰だ?」

リベルタが手帳を閉じて、皆を見渡す。

セレネは冷静に言った。

「学園の職員、あるいは生徒会の関係者の中で、Fで始まる名前の人物を洗い出しましょう。可能性があるのは……」

ティリットがすぐにノートパソコンで名前のリストを検索し始める。

「フランシス・マーフィー、フェリックス・ハリス、フィオナ・グレイ」

アルテミスが一つ一つの名前に思いを巡らせる。

「フランシス・マーフィーは生徒会の顧問だ。けれど、彼はいつも目立つ存在で、怪しい動きは聞いていない」

リベルタが資料を広げながら言う。

「フェリックス・ハリスは写真部の部長で、写真の技術は確かに高い。でも、あいつはただの技術オタクで陰謀には無縁のはず」

セレネが眉をひそめる。

「フィオナ・グレイはキャサリンの親友で、以前からキャサリンの動きをサポートしているわ。彼女の行動にも注目すべきかも」

ティリットが画面に切り替えて過去の事件記録を探しながら言う。

「過去数ヶ月の学園内の異常な出来事にフィオナの名前が複数回出てきた。行動範囲も広い」

アルテミスが考え込む。

「Fは単独の人物ではないかもしれない。あるいは偽名やコードネームの可能性もある」

リベルタが頷く。

「情報のつながりを慎重に検証する必要があるわ」

その時、ティリットのパソコンからアラート音が鳴った。

「待って、ここに怪しい通信の痕跡を見つけたわ。暗号の一部にフィオナという単語が隠されている」

セレネが画面を覗き込みながら言った。

「やはり、彼女がFの可能性が高い」

アルテミスが目を細めて静かに言った。

「ならば、直接話を聞くしかない。彼女が“E”の一員であるのか、それとも何かに操られているのか」

リベルタが決意を固めたように言った。

「Fの正体を暴けば、謎の支配の輪の核心に近づけるはずよ」

四人はその夜、フィオナ・グレイへの接触計画を立て始めた。
学園の深淵に潜む影が今、少しずつその姿を現そうとしていた。