秋晴れの昼下がり。
アンソレイエ学園の講堂には、全校生徒のざわめきが満ちていた。
壇上に立つのは、現生徒会長のアデル・クロフォード。
整ったスーツに身を包み、静かにマイクを取る。
「今年の生徒会長選挙は、従来の投票制に加え、公開討論制を正式に導入します」
ざわ……っと、空気が揺れる。
「政策だけでなく、あなたたち自身を生徒全員に見てもらう。これは、ただの人気投票ではない。人格と信念を試される、真の選挙です」
講堂の隅、観覧席でそれを見つめる四人の影があった。
リベルタは腕を組みながら目を細めていた。
「やけに演出が凝ってるな。裏がありそうだ」
「それだけ、争いが熾烈ってことよ」
アルテミスが隣で微笑む。
「学園の王冠を狙う者は多いもの、私には必要ないけれど」
その後方では、ティリットが早くもタブレットをいじっていた。
「候補者、3人か。うち2人は予想通りだけど、あれ? もう一人のデータがない?」
「こっちにも奇妙な報告がある」
セレネがスマホを見せる。
「推薦人だった子が、推薦した覚えはないって呟いてる。これ、どういうこと?」
その時だった。
壇上のアデルが、次の発表をしようとした瞬間――。
「立候補を辞退します」
前に出ようとしていた候補者の一人が、マイクに向かって告げた。
どよめきと沈黙が交錯する。
アデルは一瞬表情を曇らせたが、すぐに言葉を繋いだ。
「了解しました。選挙候補は、残り2名となります」
一礼のあと、講堂は解散となった。
その帰り道。
リベルタは廊下で誰にも気づかれずに落ちていた紙片を拾い上げた。
そこには、印刷された一文。
【偽物”は、立候補する資格なし。E】
風が吹き、紙がふわりと指からすり抜けた。
リベルタはそれを追いながら、静かに呟く。
「また、あの影か」
アルテミスが横に並ぶ。
「これはもう、事件ね」
セレネとティリットも背後から合流する。
「で、次は何から調べる?」
「校内ネットのログ、引っ張れるよ。念のため推薦状の履歴も」
四人の目に、探偵としての光が戻っていた。
選挙戦の裏で、静かに始まった操作された真実との戦いが始まる。
アンソレイエ学園の秋は、まだ冷たくも熱かった。
アンソレイエ学園の講堂には、全校生徒のざわめきが満ちていた。
壇上に立つのは、現生徒会長のアデル・クロフォード。
整ったスーツに身を包み、静かにマイクを取る。
「今年の生徒会長選挙は、従来の投票制に加え、公開討論制を正式に導入します」
ざわ……っと、空気が揺れる。
「政策だけでなく、あなたたち自身を生徒全員に見てもらう。これは、ただの人気投票ではない。人格と信念を試される、真の選挙です」
講堂の隅、観覧席でそれを見つめる四人の影があった。
リベルタは腕を組みながら目を細めていた。
「やけに演出が凝ってるな。裏がありそうだ」
「それだけ、争いが熾烈ってことよ」
アルテミスが隣で微笑む。
「学園の王冠を狙う者は多いもの、私には必要ないけれど」
その後方では、ティリットが早くもタブレットをいじっていた。
「候補者、3人か。うち2人は予想通りだけど、あれ? もう一人のデータがない?」
「こっちにも奇妙な報告がある」
セレネがスマホを見せる。
「推薦人だった子が、推薦した覚えはないって呟いてる。これ、どういうこと?」
その時だった。
壇上のアデルが、次の発表をしようとした瞬間――。
「立候補を辞退します」
前に出ようとしていた候補者の一人が、マイクに向かって告げた。
どよめきと沈黙が交錯する。
アデルは一瞬表情を曇らせたが、すぐに言葉を繋いだ。
「了解しました。選挙候補は、残り2名となります」
一礼のあと、講堂は解散となった。
その帰り道。
リベルタは廊下で誰にも気づかれずに落ちていた紙片を拾い上げた。
そこには、印刷された一文。
【偽物”は、立候補する資格なし。E】
風が吹き、紙がふわりと指からすり抜けた。
リベルタはそれを追いながら、静かに呟く。
「また、あの影か」
アルテミスが横に並ぶ。
「これはもう、事件ね」
セレネとティリットも背後から合流する。
「で、次は何から調べる?」
「校内ネットのログ、引っ張れるよ。念のため推薦状の履歴も」
四人の目に、探偵としての光が戻っていた。
選挙戦の裏で、静かに始まった操作された真実との戦いが始まる。
アンソレイエ学園の秋は、まだ冷たくも熱かった。


