午後の陽射しが差し込む生徒会室、その中心に、キャサリン・グラントは静かに座っていた。

長い金髪をきちんとまとめ、端正な制服をまとった姿は、誰が見ても学園の象徴にふさわしい。
だが、その美貌の奥にある瞳はどこか刺々しく、そして怯えていた。

アルテミスは彼女の正面に立つ。
その隣にはリベルタ、少し離れてセレネとティリットが控える。

「この写真を見てくれる?」

アルテミスは一枚のプリントを差し出した。
それは、彼女自身を遠距離から撮影した盗撮写真。
そして、その背景にはキャサリンの特別教室の窓が写っていた。

キャサリンの眉がぴくりと動く。

「これは私じゃないわ。こんなこと、する理由がないもの」

「確かに、動機は一見、成立しないように見える。でも、理由がないのではなく、理由を隠したいのでは?」

リベルタが鋭く言葉を差し込む。

「あなたは、自分の王座を脅かす存在に対して容赦しない。そうでしょう? その冷静な美しさの裏で、あなたは常に、誰が自分を超えるか測っていた」

キャサリンの瞳が鋭くなる。

「アルテミス・ポアロさん、あなたは確かに美しい。でもそれだけでは、頂点に立つには足りないわよ」

「そう、私には足りない。でも、あなたには恐れがある。絶対的な自信がある人間は、恐れを抱かない」

アルテミスは一歩、キャサリンに近づく。

「あなたのロッカーにも同じ合鍵痕があった、誰かがあなたの情報を抜いていたのよ」

キャサリンが目を見開いた。

「え……?」

リベルタが手元の資料を広げる。

「あなたは利用されたの。あなた自身が盗撮を命じたわけじゃない。けれど、あなたを疑わせるように仕組んだ人物がいる」

セレネが静かに言葉を添える。

「あなたの王座を守ると見せかけて、逆にあなたの信用を地に落とそうとした人物。それが、この事件の本当の犯人よ」

ティリットがタブレットを差し出す。

「これが、証拠フォルダのログ。このアカウント、お前の端末からじゃなくて、副会長アカウントからアクセスされてた。ログイン履歴もIPも一致してる」

キャサリンは口を開いたまま言葉を失った。

アルテミスが、最後に一言、低く囁いた。

「あなたは、彼女を従者にした。でも、彼女はずっと、あなたを壊す機会を待っていたのよ」

その瞬間、生徒会室の扉が静かに開いた。