教室に戻ると、ティリットが持ち帰った写真部の古いノートパソコンの前で、4人が向かい合っていた。

「このフォルダはロックされてるけど、暗号化は甘い。復元、やってみせるよ」

ティリットが指を走らせた数分後――。

「開いた!」

画面に現れたのは、数十枚の隠し撮り写真。
しかも、アルテミスだけではない。
学園内の目立つ女子生徒ばかりが映っている。

「これ、リスト化されてる?」

セレネが画面を覗き込む。

「女王候補……? まるで、誰かがライバルを監視していたみたいだわ」

アルテミスの顔が険しくなる。

「ここまで執拗な執着。もう個人の嫉妬というより、信仰にも近いわね」

セレネがそっと口を開く。

「私、ローザさんとキャサリンさんの昔のことを、少し聞いたことがあるわ」

三人が彼女を見る。

「二人は、中等部の頃はまるで姉妹のように仲良しだった。でも、ある時からキャサリンが周囲から女王と呼ばれ出して、次第にローザさんは影に回されたのよ。いつも、彼女のそばにいて、彼女のために動くだけの存在に」

「それってまるで……ポアロとヘイスティングズ……?」

ティリットがつぶやいた。

「でも、私たちとは違うわ。ポアロは、ヘイスティングズの心を信頼していた。けれどキャサリンは、ローザを従者としか見ていなかった」

セレネの目が静かに光る。

「だから彼女は、キャサリンの地位を守るために動いたのかもしれない」

リベルタがゆっくりと立ち上がる。

「ならば、次はキャサリン本人に話を聞く必要があるわね」

ティリットが、画面の一枚の写真を指差す。

「この写真の背景は視聴覚室の裏側だ、ここのレンズを使ったかもしれない。今日の放課後、潜入してみるよ」

「私も行くわ。今度は、逃さない」

アルテミスが頷いた。