本当にショックを受けると足に力が入らなくなるものなんだな、なんてどこかで思いながらどうしようもない願いに縋る。もう、そうするしかなかった。

 誰か、誰か嘘だと言ってくれ……っ。どうして静佳がこんな目に遭わなければならないんだ……っ。

 世の中は、理不尽だ――。



 それから静佳は、結局記憶を取り戻す事なく命を枯らせた。あっけなかった、と言わざるを得なかった。

 静佳が患っていたこの病気は、精神的なもので物理的な痛みはないが相当な負担がかかると説明されていた。

 記憶がなくなる度に脳に負担がかかり、パンクしてしまうのだそう。

 それに静佳は元々の持病も重なり、最期は抗えずに死んでしまった。

「静佳に百合なんて似合わない。デイジーの花冠のほうがよっぽど似合っているさ。」

 病室で目を閉じた静佳、棺の中に入っていた静佳は何よりも綺麗で美しくて儚い。誰よりも尊く、僕の人生をかけて大事にした人が眠っていた。

『静佳……っ、静佳……!』

『……と、う。』

『は……?』

『いま、まで、ありがとう……そういち、くん。』

 っ……。