小学生の頃は、その可愛さ故から近所の悪ガキにいじめられてしまい、助けに入った僕も見事に返り討ちにあってしまった。今思えば本当に恥ずかしい。

 中学生の頃は、いろんな男どもに告白されていた。婚約者である僕が居るのにも関わらず、静佳にとっつく奴が減る事はなくむしろ増えるばかりだった。

 そして今、高校3年生。来年には籍を入れよう、そして結婚式を挙げよう。

 そう決めていた。そうなると、信じて疑わなかった。

「静佳、おはよう。気分はどうだい?」

「……うーん、普通かなぁ。元気な気もするし、元気じゃない気もする。」

「体はしんどくない? 辛かったら遠慮なく言うんだよ。」

「ありがとう、創一君。」

 ふふっと柔らかく微笑む彼女が居るのは、一人部屋の病室。

 無機質な白で整えられていて、窓の外には雪が積もっていた。

 毎年雪で喜んで、かまくらを作ろうと意気込んでいた静佳。

 けれどもう、動く気力さえないらしい。

 ……――静佳は、難病にかかっている。

 原因も何も分からず、ただただ進行していく病気。一日ずつ、記憶がなくなる病気だった。