僕と静佳は婚約者同士だった。家同士が決めた、しきたりにそっての婚約者。

 自分たちが母親のお腹の中にいる時からの婚約者で、いつも一緒にいるのが当たり前だった。

 僕は静佳の全てを愛していた。容姿も性格も、長所や短所も全て丸々愛していた。

 静佳ほど優しく、美しく、聡明な人は存在しない。そう自負していた。

『創一君! 私、創一君のことほんとに好きだなぁ。創一君も、私のこと好き?』

『もちろん。静佳を誰よりも愛しているし、静佳以外の人を好きになんて考えられない。』

『じゃあ、ずーっと一緒にいてくれる? おじいちゃんおばあちゃんになっても、何があっても。』

『当たり前だろ。ずっと一緒だ。』

『ふふ、嬉しいっ。』

 いつの日か交わした言葉は、慈愛に溢れ夢に溢れ、そして僕の心に大切にしまっている。

 親同士が勝手に決めていた婚約者だとしても、静佳以外に愛せる人はいない。静佳だけが好きで、静佳の為に生きたいと思っていた。

 幼稚園生の頃は、よく転んで泣いていた静佳。僕だけを頼ってくれて嬉しく思わずにいられなかった。