たまたま外で友人と食事をとっていた喜三郎様を除いて、鬼灯家の人間は皆病院へ運ばれる事態となりました。

 不幸中の幸いと言っていいのかはわかりませんが、料理の中の不自然な苦味に気づいた朔太郎様がすぐに注意喚起をしたために、死者が出ることはありませんでした。

 しかし、毒の影響で朔太郎様と健二郎様に重篤な後遺症が残り、鬼灯家の跡取りとしての能力は完全に失われてしまいました。

 給仕係は自害しようとしたところをその場で取り押さえられました。
 動機は未だに不明ですが、後の調査で、この給仕係は鬼灯家の勢力拡大の犠牲になった人間の一人であったことが判明しています。

 喜三郎様の不在時に事件を起こしたのは、意図したものなのか、偶然だったのかはわかりません。
 しかし、もしかしたら、給仕係に残された最後の良心が喜三郎様に毒を盛ることに歯止めをかけたのかもしれません。
 
 いずれにしても、この事件は喜三郎様の優しい心に暗い影を落とすこととなりました。