それから数日間、その先輩は毎日現れた。私が入学して一か月間経ってから屋上に来始めた理由は分からないが、私が階段で食べてると「こんにちは」と必ず笑って挨拶を残して屋上へ消えていった。外が雨の日は一つ下の踊り場で黙々と食べている。その時も必ず挨拶は欠かさなかった。
状況が変わったのは初めて会ってから二週間ほど経った頃だった。しばらく雨が続いた後の久しぶりに晴れた日のことだった。
「ねぇ、今日すっごく良い天気だよ。たまには外で食べてみない?」
初対面以外で話しかけられたのはこれが最初だった。
「え……」
「せっかく晴れたのに、あんな暗いところで食べてたらもったいないよ。明るいところで食べたほうがもっと美味しいと思うな」
彼のふんわりとした雰囲気と笑顔に、私は断り切れずについ「はい」と答えてしまった。彼の後に付いて行って扉の向こうの屋上に出ると、先輩の言う通りからっと晴れた青空が広がっていた。日差しもそこまで強くなく、風もそよ風程度で外で食べるには打ってつけの天候だった。
「ね? 気持ちいいでしょ。僕ここが学校の中で一番好きなんだ」
知ったのは最近だけど、と先輩は付け加えて笑った。
「……はい」
先輩はポケットに手を入れて私の方に差し出した。今日はパインアメだった。
「良かったらデザートにどうぞ」
「ありがとうございます」
食後に食べたその飴は、その日の天候と一緒ですっきりとした味がした。
その日を境に私と先輩はお昼を共にするようになった。ちなみに初めてその時に名前をお互い知った。
何故か先輩は毎日のように飴を持ってきていた。毎日日替わりで味が変わっていた。
同じ屋上でご飯を食べてはいたけど、特別に会話を交わしていたわけではなくお互い黙々と食事をするだけだった。
一つ気になることと言えば、先輩は飴を口にしたらすぐにガリガリと音を立てて噛んでいることだった。
そしてお弁当を食べて残り三十分しかない昼休みの間に、平均五個は袋を開けているのだ。
どうしてもそのことが気になって、一度聞いたことがある。
「そんなに噛んで、歯が悪くなりませんか?」
そう聞かれた先輩は、少し困ったような笑顔を見せて、歯切れ悪く答えた。
「んー、癖なんだよ。あまり気にしたことなかったけど、気をつけるよ」
先輩はそう言いながら、先輩は本日六個目の袋を開けた。
そして、あっという間に夏は来た。
状況が変わったのは初めて会ってから二週間ほど経った頃だった。しばらく雨が続いた後の久しぶりに晴れた日のことだった。
「ねぇ、今日すっごく良い天気だよ。たまには外で食べてみない?」
初対面以外で話しかけられたのはこれが最初だった。
「え……」
「せっかく晴れたのに、あんな暗いところで食べてたらもったいないよ。明るいところで食べたほうがもっと美味しいと思うな」
彼のふんわりとした雰囲気と笑顔に、私は断り切れずについ「はい」と答えてしまった。彼の後に付いて行って扉の向こうの屋上に出ると、先輩の言う通りからっと晴れた青空が広がっていた。日差しもそこまで強くなく、風もそよ風程度で外で食べるには打ってつけの天候だった。
「ね? 気持ちいいでしょ。僕ここが学校の中で一番好きなんだ」
知ったのは最近だけど、と先輩は付け加えて笑った。
「……はい」
先輩はポケットに手を入れて私の方に差し出した。今日はパインアメだった。
「良かったらデザートにどうぞ」
「ありがとうございます」
食後に食べたその飴は、その日の天候と一緒ですっきりとした味がした。
その日を境に私と先輩はお昼を共にするようになった。ちなみに初めてその時に名前をお互い知った。
何故か先輩は毎日のように飴を持ってきていた。毎日日替わりで味が変わっていた。
同じ屋上でご飯を食べてはいたけど、特別に会話を交わしていたわけではなくお互い黙々と食事をするだけだった。
一つ気になることと言えば、先輩は飴を口にしたらすぐにガリガリと音を立てて噛んでいることだった。
そしてお弁当を食べて残り三十分しかない昼休みの間に、平均五個は袋を開けているのだ。
どうしてもそのことが気になって、一度聞いたことがある。
「そんなに噛んで、歯が悪くなりませんか?」
そう聞かれた先輩は、少し困ったような笑顔を見せて、歯切れ悪く答えた。
「んー、癖なんだよ。あまり気にしたことなかったけど、気をつけるよ」
先輩はそう言いながら、先輩は本日六個目の袋を開けた。
そして、あっという間に夏は来た。