「どうぞ」
「ありがとう」
私は葛西先輩の前に温かいお茶を出して向かいに座った。部屋に入るときに大分緊張していたのだろう。点けたばかりのエアコンの風が気持ちいい。
そんな中淹れたばかりの熱い緑茶を美味しそうに葛西先輩はすすった。何もこんな暑い日に、と思って冷たい麦茶もありますよ、と声をかけたがそれでも本人が熱い方を希望するのだから仕方ない。
自分用に注いだ麦茶を一気に飲み干して、私は先輩に尋ねた。
「それで、後輩の家に不法侵入してまで来た理由って何ですか?」
ビクビクしていたのを見られたという腹いせも込めて少し先輩を睨む。
「やだなぁ、不法侵入だなんて人聞きが悪いよ、蓮見さん」
湯呑から口を話して先輩はへらへらと笑った。
「いや、普通家主の許可なく勝手に入ったら不法侵入扱いになるでしょう」
先輩の態度を見て、中学の頃から変わってないな、と内心溜息を吐いた。
他人の部屋の真ん中を独占しているこの男、葛西 正志との出会いは、私が中学一年生の頃まで遡る。