「……」
 光が収まり、気が付くと私は何処かで寝ているようだった。
 
 あぁ、起きたくない。起きてしまえば現実に戻らなきゃいけない。
 
 ―――大丈夫だよ。

 どこからか、先輩の声がしたような気がする。

 ―――ほら、蓮見さんのこと大事にしてくれる人が、すぐ近くにいるじゃない。

 ふと左手の温かい感触に気が付いて、私はゆっくりと目を開けた。ずっと目を閉じていたせいか、眩しくて思わず眉根を寄せた。

「千夏……?」
 私の左手を握っていたのは静那ちゃんだった。

「せ……な……ちゃ……」
 どれくらい眠っていたのだろう。彼女の名前を呼ぼうとしたが掠れて上手く声を出すことが出来なかった。

「良かった……!今すぐ看護師さん呼ぶから!」
 静那ちゃんはポロポロと涙を零しながら、私の左手を握ったまま反対の手でナースコールを押した。

 私は小さく頷いて、弱弱しく手を握り返すことしか出来なかった。