白い薬袋から、解熱剤を取り出す。
 五個ぐらい連なっていたので、一個だけパキッと折って取り外した。
 残りのは、冷蔵庫に戻して……っと。

 ここまでは良いのだが、航太のやつ。
 本当に”コレ”を使う気か?
 飲み薬が苦手とは言っていたが、座薬を使うのは色々としんどいだろ。
 恥ずかしいし、ちょっと痛いもんな。
 
 
 ベッドに向かい、航太の様子を伺うと。
 たった数分の間に、状態が悪化してしまったようだ。

「はぁ……はぁ……」

 息づかいが更に荒くなっている。
 高熱のせいか、顔が真っ赤だし、喋るのも辛そう。
 こんな状態で座薬を、自分で入れられるのだろうか?

 一応、本人に聞いてみよう。

「航太、薬を持ってきたぞ? 自分で出来るか?」
「う~ん……む、無理……」

 参ったな。
 母親の綾さんもいないし、やっぱり俺がやるしかないのか。

  ※

 大丈夫、航太は男だ。
 俺とはただの友達、お風呂にだって一緒に入った仲。
 別に裸を見られても……。でもお尻の中は良くないような。

 そんなことを考えている間も、ベッドからうめき声が聞こえてくる。
 かなり苦しそうだ。
 これは早く座薬を入れてあげないと。

「航太、お薬を入れるから、かけ布団を取るぞ?」
「うん……」

 返事をするのも難しそうだ。
 もう何も聞かず、さっさと入れてやろう。
 かけ布団をはがすと、サテン生地のブルーパジャマが目に入る。

 なんか色っぽいな……とか、思っている場合じゃない。
 まずはズボンをゆっくり脱がしてあげる。
 そして最後は、パンツだな。

「悪いけど、パンツも下ろすからな?」
「……」

 反応が無い。
 まあ恥じらうこともないので、彼に取っては良かったのかな。
 黄色のカラーブリーフをゆっくり下ろすと……。
 そこには、小さな膨らみが確認できた。

 14歳にしては、成長が遅いな。
 毛が一本も無い。
 いかんいかん。前は関係ない、後ろに用があるんだ。

 航太を横向きに寝かせて、膝も曲げさせる。
 妹の(あおい)が小さい頃にやったことあるから、コツは覚えていた。
 そして、尻を俺の方へ向ける。

「あっ……」

 その小さくて綺麗な桃の形を見て、思わず声を出してしまう。
 ”入口”もピンク色で、可愛らしい。
 生唾を飲み込んでしまうほど……。

「おっさん……早くして」
「わ、悪い悪い! すぐに入れるから!」

 彼に言われるまで、見惚れてしまった。
 バカか、俺は……。

 袋から座薬を取り出し、彼の尻に近づける。
 そのままゆっくり入れようとした瞬間、航太が悲鳴を上げる。

「痛いっ!」
「え? そんなにか?」
「うん……おっさん、先っちょに”ぬるぬる”をつけてる?」
「ぬるぬる?」

 そんな表現されたら、ローションしか思いつかないぞ。
 まさか綾さん、息子にそんなものを使っているのか!?

「母ちゃんの化粧台に入っているよ。小さくて白いやつ」
「そ、そうなのか……」

 ちょっとドキドキしながら、綾さんの化粧台へ向かう。
 引き出しを開けてみると、化粧用品がたくさん並べてあった。

「えっと小さくて、白いのはと……」

 そこでようやく俺は、”ぬるぬる”の正体がわかった。
 何故なら、容器のふたに書いてあったから。
 ”ワセリン”だ。
 
 ふたを開けて、多めにワセリンをすくい取る。
 再度、座薬を手の平にのせて、先端へたっぷりとぬっておく。
 これで良いだろう……。

「航太、ぬるぬるをつけたから、もう一度やってみるぞ?」
「……うん」

 一発で終わらせた方が、彼の負担も少ない。
 だから力いっぱい人差し指を使って、座薬を中に押し込む。

「あっ! んん……」
「すまん。もう少しだ」

 指が中に入り込んでも、しばらくはそのままでいた。
 変に優しくしたら、座薬が戻ってくる可能性があるから。

 数秒後、航太が頬を赤らめて「もう入ったよ」と呟く。
 それを聞いた俺は、何も言わず。彼の衣服を着せてあげた。
 かけ布団を首元までかけようとした瞬間、航太と目が合う。

「お、おっさん……」
「ん? どうした?」
「その……ありがと」

 いつもツンツンしている航太と違って、しおらしい。
 まあ弱っているからだろうが。
 可愛く見えてしまう、俺はどうかしているのか。

「気にするなよ。早く熱が下がれば良いな」
「うん」

 
 これでひと段落……と背伸びをしたところで、”あの子”の顔を思い出した。
 
 『彼が嫌がることをしたら、警察に通報しますよっ!』
 
 航太のクラスメイトで、俺に学校のプリントを託した女子中学生。
 別に嫌がっていないし治療のため、仕方なく中に指を入れただけ……。
 でも今度から、あの子には気をつけた方が良いかもな。

 いろいろと勘違いされそう。