「元気でやんだよ!」
おばちゃんに出発することを伝えるとおばちゃんは一人一人と痛くなるほど強い抱擁を交わしてお別れの挨拶をした。
メーリエッヒとはまた違う肝っ玉母ちゃん感があっておばちゃんはとても良い人でみんな好きになってしまった。
3人ともツミノブに来ることがあればまたここに泊まろうと思うほどにはいい宿である。
なんと出発の日の朝、おばちゃんはサービスでお弁当まで用意してくれたのでさらに好感度は高かまった。
こうした出会いもまた旅の醍醐味であり、ああした良い人に今後も会えるといいなと思えるスタートになった。
おばちゃんに見送られて出発し、まずはエミナの故郷のトキュネスを目指す。
「ベッドで寝たいですね……」
出発した時の元気はどこに行った。
エミナはゲンナリとした顔でベッドへの思いを口にしている。
おばあちゃんの優しさと宿のベッドが恋しいと思った。
大きめの町はともかく村に泊まれる場所があるかどうかは行ってみないと分からないところが多い。
実際に行ってみると規模が小さい村で宿が無いことも度々あったし、すでに宿を畳んでいたなんてこともあった。
近い距離に村があったので2日連続で泊まれると思ったらどちらの村にも泊まれるところがなかったということも起きた。
結果村の横の場所を使わせてもらって野宿することになった。
村の近くだから魔物の心配は少ないが、泊まれると思っていて泊まれなかった時のダメージは意外と大きいものがある。
どう行くかのルートを設定したのはリュードなので何だか申し訳ない気持ちになった。
ちなみにエミナにどうやってツミノブまで来たのか聞いてみたところ知り合いの商人に同行させてもらって近くまで来たらしい。
それなりに規模の大きい商団だったので苦労が少なくツミノブまで来ることができてしまった。
ルフォンもそうだけど顔見知りの中で若い女の子となればみんなやさしくしてくれるものだからこうなってみて初めて旅の大変さに気がついたのだろう。
「うーん、まだちょっと日は高いけど、着く頃にはちょうどいいかな?」
今いるところを確認するために片手サイズに折り畳んだ地図を眺めてリュードがつぶやく。
だいぶ地図を読むことにも慣れてきた。
「まあ、どうせ今日中に次の町には着かないし、いいか」
「どうしたの、リューちゃん?」
一人で何かをつぶやくリュードの顔をルフォンが覗き込む。
「ルフォン、風呂に入らないか?」
ーーーーー
「地図で見るより立派だな」
道沿いに進んでそこから道を逸れて入っていくと小さな滝があり、滝下は大きな湖になっていた。
地図に載っていた通りで安心した。
滝の周りはグッと気温が下がっていて涼しい。
想像よりも良さげな場所にリュードはニヤリと笑う。
「おっふろ、おっふろ!」
ルフォンのテンションは高い。
旅に出てからというものお風呂とは疎遠になっていた。
久々にお風呂に入れると聞いてルフォンは喜びを抑えられなくなっている。
「あのー、お風呂って、あのお風呂ですか?」
「あの、がどのかは知らないけど多分エミナが想像しているのとはちょっと違うよ」
エミナの考えるお風呂とはぼんやりしたイメージのものだった。
見たこともないから伝え聞いた話でのイメージしかないのである。
どちらかというと温泉のようなものがエミナの中でのお風呂のイメージだ。
しかしリュードたちにとってお風呂はもっと手軽で個人用サイズのものでエミナがイメージするものよりもはるかに小さい。
「よい、しょっと」
リュードはカバンの中に手を突っ込み、中から袋を1つ取り出した。
その袋の中に手を突っ込み中のものを引っ張り出すと袋よりも明らかに大きな木の浴槽が出てきた。
驚きのあまり言葉を失うエミナ。
どこをどう見ても袋に入る大きさのものではない。
袋の口だって浴槽が通るわけがない。
リュードが取り出したのは浴槽専用のマジックボックス袋。
容量の関係で浴槽しか入らなかったので専用になってしまった。
村の外の世界で風呂に入れることはあまりないだろうとリュードは浴槽をまるっと持ってくるという荒技に出た。
案の定お風呂なんてものほとんどのところになく、お湯に浸かることが恋しくなってきていた。
しかし宿の部屋に浴槽を置いて風呂に入るわけにもいかない。
お風呂となればそれなりの水量にもなるので部屋が水浸しになることは確実。
それで宿から文句を言われてはたまらないのでこれまでルフォンにも秘密にして出してこなかった。
その上お風呂のお湯やシャワーのシステムはヴェルデガーが研究に研究を重ねて作り出したものだ。
魔石に魔法を刻み込み、魔力を込めることで魔法が発動するというもので魔法が衰退した現代においては希少技術。
簡単に人に見せられるものではないのだ。
水辺を選んだのは水が流れても平気で、道から外れた見つかりにくい場所だからという理由だった。
「ストーンウォール浴室バージョン!」
リュードはこの時のために練習した魔法を発動させる。
浴槽を中に入れるように4方向を壁で囲む。
全方向を完全な壁で囲むのではなく1方向はちゃんと出入り口を作る。
出入り口の反対側の壁の下側には半円状の穴が開いており、水が逃がせるようにもなっている。
そして壁の一方の上側にはちょっとした出っぱりがある。
出っぱりの先端は器状になっていて下側にはポツポツと細かい穴が開いている。
これがシャワーになるのだ。
自由に動かせるものではなく固定式のシャワーになるが仕方ない。
いつかシャワーヘッドを作るのはリュードのささやかな野望である。
おばちゃんに出発することを伝えるとおばちゃんは一人一人と痛くなるほど強い抱擁を交わしてお別れの挨拶をした。
メーリエッヒとはまた違う肝っ玉母ちゃん感があっておばちゃんはとても良い人でみんな好きになってしまった。
3人ともツミノブに来ることがあればまたここに泊まろうと思うほどにはいい宿である。
なんと出発の日の朝、おばちゃんはサービスでお弁当まで用意してくれたのでさらに好感度は高かまった。
こうした出会いもまた旅の醍醐味であり、ああした良い人に今後も会えるといいなと思えるスタートになった。
おばちゃんに見送られて出発し、まずはエミナの故郷のトキュネスを目指す。
「ベッドで寝たいですね……」
出発した時の元気はどこに行った。
エミナはゲンナリとした顔でベッドへの思いを口にしている。
おばあちゃんの優しさと宿のベッドが恋しいと思った。
大きめの町はともかく村に泊まれる場所があるかどうかは行ってみないと分からないところが多い。
実際に行ってみると規模が小さい村で宿が無いことも度々あったし、すでに宿を畳んでいたなんてこともあった。
近い距離に村があったので2日連続で泊まれると思ったらどちらの村にも泊まれるところがなかったということも起きた。
結果村の横の場所を使わせてもらって野宿することになった。
村の近くだから魔物の心配は少ないが、泊まれると思っていて泊まれなかった時のダメージは意外と大きいものがある。
どう行くかのルートを設定したのはリュードなので何だか申し訳ない気持ちになった。
ちなみにエミナにどうやってツミノブまで来たのか聞いてみたところ知り合いの商人に同行させてもらって近くまで来たらしい。
それなりに規模の大きい商団だったので苦労が少なくツミノブまで来ることができてしまった。
ルフォンもそうだけど顔見知りの中で若い女の子となればみんなやさしくしてくれるものだからこうなってみて初めて旅の大変さに気がついたのだろう。
「うーん、まだちょっと日は高いけど、着く頃にはちょうどいいかな?」
今いるところを確認するために片手サイズに折り畳んだ地図を眺めてリュードがつぶやく。
だいぶ地図を読むことにも慣れてきた。
「まあ、どうせ今日中に次の町には着かないし、いいか」
「どうしたの、リューちゃん?」
一人で何かをつぶやくリュードの顔をルフォンが覗き込む。
「ルフォン、風呂に入らないか?」
ーーーーー
「地図で見るより立派だな」
道沿いに進んでそこから道を逸れて入っていくと小さな滝があり、滝下は大きな湖になっていた。
地図に載っていた通りで安心した。
滝の周りはグッと気温が下がっていて涼しい。
想像よりも良さげな場所にリュードはニヤリと笑う。
「おっふろ、おっふろ!」
ルフォンのテンションは高い。
旅に出てからというものお風呂とは疎遠になっていた。
久々にお風呂に入れると聞いてルフォンは喜びを抑えられなくなっている。
「あのー、お風呂って、あのお風呂ですか?」
「あの、がどのかは知らないけど多分エミナが想像しているのとはちょっと違うよ」
エミナの考えるお風呂とはぼんやりしたイメージのものだった。
見たこともないから伝え聞いた話でのイメージしかないのである。
どちらかというと温泉のようなものがエミナの中でのお風呂のイメージだ。
しかしリュードたちにとってお風呂はもっと手軽で個人用サイズのものでエミナがイメージするものよりもはるかに小さい。
「よい、しょっと」
リュードはカバンの中に手を突っ込み、中から袋を1つ取り出した。
その袋の中に手を突っ込み中のものを引っ張り出すと袋よりも明らかに大きな木の浴槽が出てきた。
驚きのあまり言葉を失うエミナ。
どこをどう見ても袋に入る大きさのものではない。
袋の口だって浴槽が通るわけがない。
リュードが取り出したのは浴槽専用のマジックボックス袋。
容量の関係で浴槽しか入らなかったので専用になってしまった。
村の外の世界で風呂に入れることはあまりないだろうとリュードは浴槽をまるっと持ってくるという荒技に出た。
案の定お風呂なんてものほとんどのところになく、お湯に浸かることが恋しくなってきていた。
しかし宿の部屋に浴槽を置いて風呂に入るわけにもいかない。
お風呂となればそれなりの水量にもなるので部屋が水浸しになることは確実。
それで宿から文句を言われてはたまらないのでこれまでルフォンにも秘密にして出してこなかった。
その上お風呂のお湯やシャワーのシステムはヴェルデガーが研究に研究を重ねて作り出したものだ。
魔石に魔法を刻み込み、魔力を込めることで魔法が発動するというもので魔法が衰退した現代においては希少技術。
簡単に人に見せられるものではないのだ。
水辺を選んだのは水が流れても平気で、道から外れた見つかりにくい場所だからという理由だった。
「ストーンウォール浴室バージョン!」
リュードはこの時のために練習した魔法を発動させる。
浴槽を中に入れるように4方向を壁で囲む。
全方向を完全な壁で囲むのではなく1方向はちゃんと出入り口を作る。
出入り口の反対側の壁の下側には半円状の穴が開いており、水が逃がせるようにもなっている。
そして壁の一方の上側にはちょっとした出っぱりがある。
出っぱりの先端は器状になっていて下側にはポツポツと細かい穴が開いている。
これがシャワーになるのだ。
自由に動かせるものではなく固定式のシャワーになるが仕方ない。
いつかシャワーヘッドを作るのはリュードのささやかな野望である。