「ほら、次もいるし、やる気出していくぞ」

 落ち込むエミナを励ましながら進んでいくと次に出てきたのはゴブリンだった。
 わらわらと集団でいるイメージもあった魔物だが、今回は5匹しか出てこなかった。

 数の上ではリュードたちより多くてもそれぐらいなら物の数ではない。
 冒険者学校の教師たちがコントロールして5匹だけなのだが、これぐらいならリュード1人でも余裕である。

 村があった森にはいない魔物なので実はリュードも初めてみる。
 前世の知識があるリュードにとってはある意味で有名な魔物で少しだけ感動する。

 見た目は聞き及んでいた通り不細工な顔をしている。
 武器は石器時代のような石のナイフや槍。

 ちょっと調達した方法が気になるなとリュードは思った。
 授業で習った話ではこうした武器はダンジョンで生まれた時に最初から持っているらしい。
 
 けれどそもそもダンジョンでどうやって魔物が誕生するのか謎であるので武器の発生も結局は謎なのである。

「それじゃあパーティーっぽく戦おうか。俺が引きつけるからルフォンとエミナで攻撃頼むぞ」

「うん!」

「分かりました!」

 連携を取らなくてもゴブリンに遅れをとることはない。
 ひと薙ぎ力を込めて剣を振ればゴブリンを3匹ほど持っていける自信がある。

 戦うにしても相当手加減しなきゃいけない。
 でもこの先何が待ち受けるのか分からないのでとりあえず出来るだけ早い内に団体行動が出来ることをアピールしておく。

 リュードが前に出て駆け出してルフォンがそれに続く。
 それに気づいたゴブリンだったがもう遅い。

 手始めに手近な1匹を切り捨てる。
 実際に戦った感触で分かる。
 
 このまま続々切り捨てていけば簡単に終わってしまうと。
 グッと切り倒したい気持ちを抑えてゴブリンの槍を防ぐ。

 続くルフォンがゴブリンの喉を突き、もう1匹を切り倒す。
 リュードはルフォンに向かおうとするゴブリンを切り裂いて、さらに続いて1匹のゴブリンを蹴り飛ばす。

 ゴロゴロと転がるゴブリンは残るゴブリンとぶつかって倒れた。

「今度こそ!」

 最後にエミナが魔法で2匹まとめてゴブリンを焼き払う。

「イェーイ、らくしょー」

 ルフォンとエミナがハイタッチする。
 スマートに戦えたと思う。

 エミナの見せ場も作りつつリュード自身も戦い、仲間のフォローもしてみせた。
 見ているキスズにもアピールできているはずだ。
 
 ゴブリンの死体は光る粒子となって消えていく。
 ダンジョン産の魔物の死体は魔力なって霧散して消えるという性質がある。
 
 素材を全て回収できないというデメリットはあるがドロップと呼ばれる魔物の魔石や素材の一部が落ちることがある。
 剣についた血なんかも消えてしまうし、魔物が死んだことが分かりやすくていい。

 ちょっとの間残っていたので死んでいないのかと思ったけれど、ちゃんとゴブリンの死体は魔力となって消えた。
 今回は何もなく死体が綺麗さっぱり消えてしまったので残念ながらドロップ品はなかったのである。

 焦らずじっくりとダンジョンを攻略する。
 オオカミのような魔物ウルフや虫型の魔物、もうちょっと多いゴブリンなど何回も戦いを繰り返して下へ下へと向かう。

「ふう、そろそろ昼かな?」

 ダンジョンの中は時間がわからない。
 時計なんて便利なものもあるにはあるが、まだまだ高級品になっているのでリュードたちは持っていない。

 休憩や食事をとるのも大切な行為であるのでやらないと減点にもなる。
 時間がわからない以上己の感覚で時間をはかるしかない。

 体も動かしてお腹も空いてきたので休憩がてら昼ご飯を取ることにした。
 魔物と戦った広めの部屋で休む。

 周辺の安全を確認して荷物の中からお弁当を取り出す。
 今回のお昼は宿のおばちゃんに追加料金を払ってお弁当を作ってもらった。

 家庭的で長年宿で料理を作り続けてきたおばちゃんの料理はとても美味しく、前からお弁当もやってるよと言われていたのでお願いしたのだ。
 ルフォンも料理が好きで時間がある時にはおばちゃんに料理について聞いたりもしていた。

 エミナの分も勝手に頼んでおいた。
 お金払うと言っていたけど勝手にやったことなのでいらないとルフォンはお弁当を押し付けていた。

「意外と時間かかるね」

「そうだな、想像していたよりも中は広いみたいだな」

 実戦といっても何回か戦って終わりだと思っていた。
 けれど思っていたよりも戦闘の回数は多かった。

 相手が弱くても何回も戦って警戒を続けていると多少は疲れてくる。

「エミナちゃんは大丈夫?」

「むぐっ、はい、大丈夫です。魔力もまだありますし2人の足を引っ張らないように頑張りますよ!」

 想像よりもエミナが健闘していた。
 ホーンラビットとの戦いで不安があったが、魔力量はそれなり多く戦いにもしっかりと付いてきていた。

 もっと落ち着きが出て冷静に判断が下せるようになれば冒険者としても十分活躍出来るとリュードは評価していた。

「少しいいか?」

 離れて見ていたキスズが近づいてきた。

「実は時間的にはもう2組ほどここに入ってきている」

 冒険者学校から支給された懐中時計を見てキスズが時間を確認する。
 リュードたちがダンジョンに入ってからだいぶ時間が経っていて昼過ぎになっていた。

「お前たちはペースが早いから心配していないけど一応仕事だから今一度言っておく。もし追いつかれてしまったらそこで強制終了で追いついたパーティーが前に行くことになるからな」

 まあ追いつくことはないと思うが、と言い残してキスズはまた離れていった。
 独占攻略ではない以上他の冒険者学校生徒のパーティーも時間差で入ってくる。

 後発でも前に追いつけるほど優秀なら後発を優先する。
 シビアなルールだがダンジョンも限られたものなのでやむを得ない。