リュードの父、ヴェルデガーが狩りよりも農業を好むように戦いに参加することを好まない村人もいる。
逆に戦いを好む者でも己の実力をわきまえている者もいる。
なので力比べは自由参加になっており村長の家でエントリーしなければならない。
リュードが村長の家の玄関横に参加エントリー用紙に名前を記入しているとあんまり会いたくなかったやつが来てしまった。
村長の家から出てきたそいつは腰に右手を当て、左手でリュードを指差して訝しむようにこちらを見ている。
名前はテユノ・ドジャウリは村長の娘で竜人族の女の子である。
やや青みがかった青い髪に美少女といえる整った顔、体つきはスレンダーだが竜人の女性の中でも力が強く魔力もかなりある。
ルフォンが可愛い感じの美少女ならテユノは綺麗な感じの美少女である。
リュードとルフォンと同い年なのだが大分しっかりした感じがしていて大人びて見える。
村長の家の前、ということはテユノの家の前でもあるので遭遇しても不思議ではない。
嫌いなわけじゃないんだけどリュードはこのテユノがやや苦手であった。
勝ち気というか強気というか、ハッキリとしたややキツイ感じの性格をしていてなぜなのかリュードに対してそれが強く出ているのである。
見た目だけはホントいいのに、胸小さいけど。
「何か今失礼なこと考えませんでしたか?」
ギッとテユノの目つきが険しくなる。
口には出していなかったはずなのに考えを読まれてしまったみたいだった。
「何も」
確かに考えてたこと失礼だろうなとは思いつつ馬鹿正直に肯定する必要もない。
変なところで勘が鋭い。
あくまでも動揺を見せないようにして短く答える。
信用ならないと目が言っているけど心の中で思ったことなのだから追及しようもない。
まあまだまだ成長途中なのだからそんなに気にすることもないはずだ。
テユノはちらりとエントリー用紙に目を落としてリュードの名前を確認する。
「まあいいわ。あなたも参加するんですか、力比べ」
「当然だろ?」
出ないこともまた適正な判断を下したとして非難されることはない。
でもそれはちゃんと実力が分かっているやつの場合で、そうではないやつが出ないとなったら臆病者扱いされることだってありえる。
リュードは実力があると周りも思っているので出なきゃ臆病者扱いされる側になるから当然出場する。
当然臆病者扱いされるのが怖いから出るのでもないけど。
「でも、その、怪我とかするかもしれないのよ?」
「するかもしれないな」
「怪我したら痛いしみんなきっと手加減なんかしないよ」
「覚悟の上だよ」
「えっと…………あんたなんかコテンパンにやられちゃえばいいのに!」
「いきなり何を……」
テユノはドアが壊れるんじゃないか心配になるほどの勢いで家の中に戻っていってしまった。
会話の中身もよく分からない。
要するに実力が足りなさそうだから辞退しろということだったのだろうかとリュードは首を傾げた。
他の子には姉御肌みたいな感じでいい子なのにどうして自分に対してあんな風になってしまうのか全然理解できない。
思い当たる節はなくても嫌われてしまっているのかもしれないと考えるとちょっとだけショックだ。
傷心気分のまま家に帰るとメーリエッヒが出迎えてくれる。
メーリエッヒも力比べに出場するからちょっと外で体を動かしていたところにリュードが帰ってきたが正しい状況である。
ヴェルデガーは当然出場せず医療班として待機組になっているのでポーションの用意をしたり治療魔法の再確認をしたりしている。
村の大人たちも村の北側にある力比べするために開かれた場所の整備や危険がないように周りの魔物を一掃したりと忙しい。
ウォーケックも力比べに出るため調整を行なっているので力比べまでの数日は自主練となっているのでリュードもメーリエッヒの邪魔にならないところで木剣を使って練習をする。
村は力比べに向けて静かに燃えていた。
ーーーーー
力比べ当日は農業組や力比べに出ない人で近くに魔物がいないか見回ったりみんなに振る舞う料理を作ったりしている。
そんな中で力比べに出場するみんなはいつもの無駄口も叩かず戦いの直前まで力を蓄えている。
メーリエッヒも気合が入っていて前日の夜ごはんと今朝の朝ごはんは力をつけるという意味でやたらと豪華だった。
村の北にある力比べ会場には大きく周りを柵で囲ってその周りに観客である村人と柵の中に出場者である村人がすでに集まっていた。
会場といっても森を切り開いて地面をならして力比べをする場所を柵で囲っているくらいなのだけど。
参加する数は男女合わせて子供20人、大人150人ほど。
結構な数が参加する。
農業専業組と参加できない子供、一部の警備要員や医療要員を除けば参加しない人の方が少ない。
今年は子供の数も多いそこら辺もちょっとした見どころになっている。
周りではすでに料理が少しずつ振舞われ、大人たちは地べたに座って酒を飲み始めている。
力比べは力を見せつける場でもあるが同時にお祭りでもある。
農業組では自分ところの農作物をチップにして賭けをしている連中もいるが今日は無礼講なので問題はない。
柵の中に並ぶ参加者たち。
全身筋肉の塊みたいな赤髪の男性が参加者たちの前に出る。
村で1番強い男、村長のヤーネル・ドジャウリである。
互いに挑発しあっていた男たちもなんてことはない会話をしていた女性たちも、柵の外で酒盛りしている連中もみな口を閉じてヤーネルを見る。
「今日は力比べの日である。……あまり長いこと話しをしてもつまらなかろう。私は私を超えてくれる者がいないか楽しみにしている」
逆に戦いを好む者でも己の実力をわきまえている者もいる。
なので力比べは自由参加になっており村長の家でエントリーしなければならない。
リュードが村長の家の玄関横に参加エントリー用紙に名前を記入しているとあんまり会いたくなかったやつが来てしまった。
村長の家から出てきたそいつは腰に右手を当て、左手でリュードを指差して訝しむようにこちらを見ている。
名前はテユノ・ドジャウリは村長の娘で竜人族の女の子である。
やや青みがかった青い髪に美少女といえる整った顔、体つきはスレンダーだが竜人の女性の中でも力が強く魔力もかなりある。
ルフォンが可愛い感じの美少女ならテユノは綺麗な感じの美少女である。
リュードとルフォンと同い年なのだが大分しっかりした感じがしていて大人びて見える。
村長の家の前、ということはテユノの家の前でもあるので遭遇しても不思議ではない。
嫌いなわけじゃないんだけどリュードはこのテユノがやや苦手であった。
勝ち気というか強気というか、ハッキリとしたややキツイ感じの性格をしていてなぜなのかリュードに対してそれが強く出ているのである。
見た目だけはホントいいのに、胸小さいけど。
「何か今失礼なこと考えませんでしたか?」
ギッとテユノの目つきが険しくなる。
口には出していなかったはずなのに考えを読まれてしまったみたいだった。
「何も」
確かに考えてたこと失礼だろうなとは思いつつ馬鹿正直に肯定する必要もない。
変なところで勘が鋭い。
あくまでも動揺を見せないようにして短く答える。
信用ならないと目が言っているけど心の中で思ったことなのだから追及しようもない。
まあまだまだ成長途中なのだからそんなに気にすることもないはずだ。
テユノはちらりとエントリー用紙に目を落としてリュードの名前を確認する。
「まあいいわ。あなたも参加するんですか、力比べ」
「当然だろ?」
出ないこともまた適正な判断を下したとして非難されることはない。
でもそれはちゃんと実力が分かっているやつの場合で、そうではないやつが出ないとなったら臆病者扱いされることだってありえる。
リュードは実力があると周りも思っているので出なきゃ臆病者扱いされる側になるから当然出場する。
当然臆病者扱いされるのが怖いから出るのでもないけど。
「でも、その、怪我とかするかもしれないのよ?」
「するかもしれないな」
「怪我したら痛いしみんなきっと手加減なんかしないよ」
「覚悟の上だよ」
「えっと…………あんたなんかコテンパンにやられちゃえばいいのに!」
「いきなり何を……」
テユノはドアが壊れるんじゃないか心配になるほどの勢いで家の中に戻っていってしまった。
会話の中身もよく分からない。
要するに実力が足りなさそうだから辞退しろということだったのだろうかとリュードは首を傾げた。
他の子には姉御肌みたいな感じでいい子なのにどうして自分に対してあんな風になってしまうのか全然理解できない。
思い当たる節はなくても嫌われてしまっているのかもしれないと考えるとちょっとだけショックだ。
傷心気分のまま家に帰るとメーリエッヒが出迎えてくれる。
メーリエッヒも力比べに出場するからちょっと外で体を動かしていたところにリュードが帰ってきたが正しい状況である。
ヴェルデガーは当然出場せず医療班として待機組になっているのでポーションの用意をしたり治療魔法の再確認をしたりしている。
村の大人たちも村の北側にある力比べするために開かれた場所の整備や危険がないように周りの魔物を一掃したりと忙しい。
ウォーケックも力比べに出るため調整を行なっているので力比べまでの数日は自主練となっているのでリュードもメーリエッヒの邪魔にならないところで木剣を使って練習をする。
村は力比べに向けて静かに燃えていた。
ーーーーー
力比べ当日は農業組や力比べに出ない人で近くに魔物がいないか見回ったりみんなに振る舞う料理を作ったりしている。
そんな中で力比べに出場するみんなはいつもの無駄口も叩かず戦いの直前まで力を蓄えている。
メーリエッヒも気合が入っていて前日の夜ごはんと今朝の朝ごはんは力をつけるという意味でやたらと豪華だった。
村の北にある力比べ会場には大きく周りを柵で囲ってその周りに観客である村人と柵の中に出場者である村人がすでに集まっていた。
会場といっても森を切り開いて地面をならして力比べをする場所を柵で囲っているくらいなのだけど。
参加する数は男女合わせて子供20人、大人150人ほど。
結構な数が参加する。
農業専業組と参加できない子供、一部の警備要員や医療要員を除けば参加しない人の方が少ない。
今年は子供の数も多いそこら辺もちょっとした見どころになっている。
周りではすでに料理が少しずつ振舞われ、大人たちは地べたに座って酒を飲み始めている。
力比べは力を見せつける場でもあるが同時にお祭りでもある。
農業組では自分ところの農作物をチップにして賭けをしている連中もいるが今日は無礼講なので問題はない。
柵の中に並ぶ参加者たち。
全身筋肉の塊みたいな赤髪の男性が参加者たちの前に出る。
村で1番強い男、村長のヤーネル・ドジャウリである。
互いに挑発しあっていた男たちもなんてことはない会話をしていた女性たちも、柵の外で酒盛りしている連中もみな口を閉じてヤーネルを見る。
「今日は力比べの日である。……あまり長いこと話しをしてもつまらなかろう。私は私を超えてくれる者がいないか楽しみにしている」