なのでお手軽ダンジョンとして初心者なんかに人気のダンジョンとなっていて、そこに目をつけた人がいた。
 貴族相手に冒険者としての知識や技術を教えていた者が安全に魔物との経験を積ませる方法としてダンジョンを利用することを思いついたのである。

 限られた貴族相手に行われていたものがいつしか学校となった。
 けれど今でもダンジョンで実戦の訓練ができるのだ。
 
 ツミノブの冒険者学校はその点で人気の冒険者学校だった。
 湧く魔物は決まっていて、数も多くなく安全に実戦経験が積める。
 
 時間が経てば復活するし生徒を連れて実戦訓練のために魔物を探し回らなくて良いので学校としても非常に便利。

 魔物が限られるという点での問題はある
 魔物は無限と言ってもいいぐらいに湧いてくるが、次から次へと出てくるのではなく一定の時間を置かねばならない。

 一度挑むと多少の時間はおかねばならないのだ。
 なのでダンジョンの実戦訓練に挑めむために条件が存在する。
 
 これが合格や優秀点の数である。
 合格数が一定以上かつ3人以上のパーティー。
 
 これが実戦訓練に挑むための最低条件。
 一般に世の中の冒険者たちはパーティーと呼ばれる複数人での活動を基本としている。
 
 1人や2人での活動がないとは言えないけれどそうしている人は少ない。
 理想と言われているのは4人から6人。
 
 前衛後衛がバランス良くいるのが良いとされ、人数が多過ぎても少な過ぎてもいけない。

 訓練に使われていると言ってもダンジョンはダンジョンなので危険はある。
 最低数とされる3人、これがいなければ中に入ることも許されないのだ。

 3人以上揃えれば挑めるのであるが、それなりに人数のいる冒険者学校ではそれぐらいの基準は簡単に満たすことができる。
 さっさと卒業して冒険者となりたいみんなはどうしても先に入りたい思う。

 そんな時、順番を決めるために必要なのが優秀点になる。
 優秀点が多いものが優先。
 
 これが成績優秀者が早期卒業できる理由でもある。
 優秀点が多いとパッと入り実戦訓練を終えることができてパッと卒業することができるのだ。

「1人探さなきゃいけないのか……」

「2人とか3人でもいいんじゃないの?」

「いや、1人だ」

 リュードとルフォンは2人なので最低数まであと1人必要とな?。
 最大では6人まで許されるのであるがリュードは誘い入れるにしても1人がいいと考えていた。
 
 人付き合いが面倒だから、とかではない。
 最後の最後に優秀点をもらい、成績優秀者として卒業するためには1人であるのが望ましいからである。
 
 大人数で挑めば難易度は下がり、攻略は簡単になる。
 つまり成績評価も相対的に低くなってしまう。
 
 最低人数の3人でしっかりとクリアするところを見せつけられれば自ずと評価は高いものになる。
 なのでリュードとルフォンの2人に誰か引き入れるなら1人がいいのである。

 最悪の場合2人でも許容できる。
 けれど実戦訓練まで時間の余裕があるので、できる限り1人の人を探すのがいい。
 
 これまで合格も優秀点も多いから実戦訓練が無難でも成績優秀な気がしないでもない。
 しかしどうせやるなら最後まで優秀のままいきたいのである。

「けどなぁ……」

 人を探すと言っても楽ではない。
 それなりの学校生活で周りは周りで仲良くなっていた。
 
 それに比べてリュードとルフォンは2人だけでいつも一緒。
 非友好的なつもりは一切ないのに誰も話しかけてもこない。
 
 初日のキスズインパクトが強すぎたのかもしれないと今更ながら反省する。
 実際キスズのこともあったし美男美女のリュードとルフォンの間にみんな入っていけなかった。
 
 実戦訓練では連携なんかも見られるので置き去りにして戦うわけにもいかない。
 せめて連携は取れるぐらいの人が欲しい。
 
 リュードとルフォンの優秀点で見ると優先的に入れるはずなのだが、実戦訓練としてダンジョンにはいるために必要な条件をクリアするのに苦労しそうだった。
 実は話しかけてきた奴がいないこともない。
 
 それは大体がルフォン目当てだったので、当然の如くそんな奴らは却下である。
 しかもパーティーのバランスも考えなくてはいけない。
 
 ルフォンは当然前衛になるし、リュードも基本は前衛なので引き入れたい人材は後衛になることも考えていた。
 リュードは魔法も使えるので後衛でもいいといえばいい。
 
 教師はリュードを前衛で剣を振るタイプだと思っているから魔法を使ってみせて意外性をアピールするのも悪くはない。
 最終的には誰でもいいから1人入ってくれないかなとため息をついた。

「うーん……」

 悩んでみても答えは出ない。
 とりあえず1人っぽそうなのを捕まえて話でもしてみる他方法はない。

「ルフォンはどんな人がいい?」

 一時的にとはいえだ、パーティーを組むのだから出来るだけルフォンの希望に沿った人がいい。

「……リューちゃんに色目を使わない人かな?」

 ルフォンは真剣な顔をして答えた。
 冗談でも何でもなく本気の答えである。

「あとはあんまり男の人だとイヤ、かな。それぐらいかな?」

 少ない条件には見えるけれど希望を叶えようとおもうとひとまずと半分の人が選択肢から消える。
 いや、むしろ半分以上が消えると言っていい。
 
 女性の冒険者は最近増えてきているとは言っても男性と比較するとまだまだ少なく、冒険者学校でも女性の割合は2割ほどしかいない。
 8割ほどが選択肢から消えたことになる。

 自分が1人の女の子に絞って声をかけていたら、それは外から見たらただのナンパではないか?なんてふと思った。
 ただでさえルフォンを独占しているいけすかない野郎なんて話が立っているのに、女好きみたいな扱いをされるのは勘弁願いたい。

 実はこうした話はサンセール一行が嫉妬で流した噂、というか単なる悪口が独り歩きしたものだった。
 リュードは噂の発生源は知りもしないが、噂の内容は耳がいいのでちょいちょい聞こえたりしていた。

「はぁ、とりあえず帰ろう」

「ため息ついちゃダメだよ?」

 もう授業は終わり、人はいない。
 教室での作戦会議も良いアイデアは出なかった。